研究課題/領域番号 |
24592306
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
白阪 哲朗 宮崎大学, 医学部, 准教授 (00274788)
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研究分担者 |
矢野 武志 宮崎大学, 医学部, 助教 (80521707)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オレキシン / オレキシン受容体 |
研究概要 |
C57BL/6J(25-36g)マウスを用いて側脳室に薬物投与に用いるカテーテルを挿入し、右の大腿動静脈に薬物投与や血圧、心拍数測定に使用するカテーテル留置を試みた。 麻酔下にマウスの頭部を脳定位固定装置に固定して右側脳室に薬物投与に用いるガイドカテ‐テルを挿入する。同時に皮質脳波(EEG)を測定するためのステンレス製のネジを前頭部の頭蓋骨に留置し、歯科用セメントで固定した。以上の操作終了後に死亡するマウスを認めた。また、脳室内留置を確認するために脳室内にアンギオテンシンIIを投与して数分間以上持続する飲水行動を確認した。飲水行動を認めないマウスを約30%に認め、これらはガイドカテーテル先端が脳室内に留置されていないと考えられた。 左右の大腿動静脈に血圧測定および薬物投与に用いるカテーテル(PE-10, PE-50;夏目)を挿入する。カテーテルは皮下を通して頚背部から外に出す。動脈圧カテーテルは血圧測定のために圧変換器(Could;現有)に連結し、心拍数は血圧波形から算出する。板状筋から筋電図(EMG)を記録するために頚背部に電極を固定する。 動静脈カテーテルが血管径と比べて比較的大きいため、カテ挿入不可能なマウスもいた。 腎交感神経は、後腹膜からアプローチした。左の腎交感神経を顕微鏡下に探すが、リンパ管との区別が困難だった。過ってリンパ管を損傷するとリンパ液が漏れだし神経を露出して剥離する操作が困難になった。神経は細くてピンセットで神経周囲の結合組織と剥離するのが困難だった。剥離した腎交感神経に電極(AS633)をかけてシリコン(Sil604S-A;Semicosil)で固定したが腎交感神経活動は観察されなかった。観察できなかった原因としては、電極をかけた物が腎交感神経ではなかった可能性と神経損傷によるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験モデル作成が困難なことと十分な実験時間が確保できないことが主な理由である。マウスの頭蓋骨にガイドカテーテルを留置する穴を開けると出血を認める。頭蓋骨の大きさに対して開ける穴の大きさが比較的大きいこと、そして骨の厚さが薄いためにドリルで開けていると骨に亀裂を生じる場合がある。出血が多いマウスは死亡するものも認めた。ガイドカテーテルを留置しても操作終了後に死亡するマウスも認めた。また、脳室内留置を確認するために脳室内にアンギオテンシンIIを投与して数分間以上持続する飲水行動を確認した。飲水行動を認めないマウスを約30%に認め、これらはガイドカテーテル先端が脳室内に留置されていないと考えられた。脳室カテ留置後は10日間以上の回復期をおいた。回復期の間に死亡するマウスを認めた。次に左右の大腿動静脈に血圧測定および薬物投与に用いるカテーテルを挿入する。血管径に比較してカテーテル(PE-10)が大きいのでカテ挿入は容易ではない。腎交感神経記録に関しては、腎交感神経を顕微鏡下に探すが、リンパ管との区別が困難だった。過ってリンパ管を損傷するとリンパ液が漏れだし神経を露出して剥離する操作が困難になった。神経は細くてピンセットで神経周囲の結合組織と剥離するのが困難だった。剥離した腎交感神経を電極にのせてシリコンで固定したが腎交感神経活動は観察されなかった。観察できなかった原因としては、電極をかけた物が腎交感神経ではなかった可能性と神経損傷によるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
実験モデル作成技術を向上し、モデル作成の成功率を上げる必要がある。できるだけ実験日と実験日の間を開けないようにして詰めて実験を行うようにする。 マウス頭部にガイドカテーテル留置の際に出血を認める。マウス頭蓋骨の損傷を小さくするために、頭部に留置するガイドカテーテルをセメントと共に頭蓋骨に固定するためのネジをより小さいものにする必要がある。穴を開けるのに使用するドリルも小さいほうがよい。頭部へのガイドカテーテル留置は、手術侵襲が大きいので回復期間を2週間くらいおいたほうがよいと思われる。大腿動静脈カテーテル留置に関しては、動脈カテーテルは一部をコイル状にした方が閉塞しにくくなり、マウスの足の屈曲等の動きに対しても柔軟性ができるのでカテ作成時に加熱処理する。腎交感神経活動記録電極に関しては、使用電極がラットに使用していたものと同じで、マウスの神経の太さに対して比較的大きい。別の電極使用(0.001-in bare, 0.0055-in coated; A-M Systems, Inc)を考慮する。マウスに使用可能な新たな記録電極を文献(Hypertension. 2012;60:856-64)を基に作成する。マウスの腎交感神経活動記録を行っている施設に見学に行く。血圧、心拍数および腎交感神経活動が意識下で記録できるようになったら実際に麻酔薬等を投与して記録する。野生型のマウスの実験を行い、それが可能になったらオレキシン受容体変異マウスを入手する。前計画ではノックアウトマウスを入手予定であったが、現在入手困難のためアブレーションマウスを入手する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスの大腿動静脈留置カテーテルに使用するPE-10, PE-50の購入。新たに作成し直す腎交感神経の記録に使用する電極(0.001-in bare, 0.0055-in coated; A-M Systems, Inc)および部品として使用するPE90の購入。腎交感神経と電極を固定するためのシリコンゲル(Semicosil 932A and B)。筋電図および心電図記録に使用する電極(AS633; COONER WIRE)。マイクロダイアリシスに使用する材料を購入する。マイクロダイアリシス用透析プローブ(A-I-4-01, A-I-8-01)、ガイドカニューレ(AG-4、AG-8)、ダミーカニューレ(AD-4、AD-12)を購入する。分離カラム(EICOMPAK SC-50DS)および酵素カラム(E-ENZYPAK;3 mm i.d.×4 mm)を購入する。マウスの側脳室に薬物を投与するのに使用するgas-tight syringe(10mμl Hamilton)および微量注入ポンプ(ESP-64;EICOM)を購入する。マイクロダイアリシスのデータ記録および分析に使用するコンピュータを購入する。マイクロダイアリシスに用いる様々な試薬(0.1Mクエン酸-0.1M酢酸ナトリウム、17%メタノール、SOS,EDTA-2Na)を購入する。実験動物に用いるC57BL/6Jマウス(24-35g)を購入する。記録を保存するためのDATテープを購入する。マウス脳からRNA抽出に使用するキット(TaqMan RNA-to CT Kit; life technologies japan)を購入する。第34回日本循環制御学会(福井市;6/7-8)および第41回日本集中治療医学会(京都府;2/27-3/1,2014年)に行くので旅費として使用予定である。
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