研究課題/領域番号 |
24592307
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
村川 雅洋 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90182112)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アナンダミド / カンナビノイド受容体 / 亜酸化窒素 / 鎮痛 / 急性耐性 |
研究概要 |
脳内には全身麻酔薬と同様に向精神作用と鎮痛作用を有するアナンダミドが存在する。本研究の目的は、脳内アナンダミド系の活動と各種全身麻酔薬の催眠鎮静作用および鎮痛作用の変化を検討し、全身麻酔薬の催眠鎮静作用および鎮痛作用にけるアナンダミドの役割を明らかにしようとするものである。 脳内アナンダミドのカンナビノイド受容体CB1の拮抗薬SR14171を腹腔内に前投与したWitarラットとプラシボを投与した対照で75%亜酸化窒素吸入下のテイルフリック時間の変化を測定し、亜酸化窒素の鎮痛作用と、亜酸化窒素の鎮痛作用に対する急性耐性形成に及ぼす脳内アナンダミドの影響を検討した。 その結果、対照群、SR14171 1㎎/kg投与群では亜酸化窒素吸入による鎮痛作用が認められ、その作用は吸入30~60分をピークに減弱し、鎮痛作用に対する急性耐性が形成されることが確認された。一方、SR14171 5㎎/㎏投与群では、鎮痛作用に変化はなく、180分間の亜酸化窒素吸入中鎮痛作用が持続した。すなわち、SR14171は亜酸化窒素の鎮痛作用に対する急性耐性形成を阻害した。 上記の効果が脳内のどの部位で発現しているのかを検索するため、ラットの脳室内または脊髄腔内に薬物投与用のカニューラ、カテーテルを留置し、SR14171 10μgを脳室内および脊髄腔内に前投与してテイルフリック時間の変化を測定した。 その結果、脳室内投与群では腹腔内投与群と同様に亜酸化窒素吸入による鎮痛作用が認められ、その作用が180分間の吸入中持続した。脊髄腔内投与群では、亜酸化窒素吸入による鎮痛作用が認められなくなった。すなわち、脳内アナンダミドは大脳レベルで亜酸化窒素の鎮痛作用に対する急性耐性形成に関与し、脊髄レベルでは鎮痛作用発現に関与していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度当初は、亜酸化窒素などの全身麻酔薬投与による脳内アナンダミドの量的変化を検討する予定であったが、測定に用いる質量分析計の調整に難渋した。この点では、本年度の目的の一部を達成することができなかった。そのため、カンナビノイド受容体拮抗薬の全身投与(腹腔内投与)による亜酸化窒素の鎮痛作用の変化を検討した後、その効果が確認されたため、次年度以降に実施予定であったカンナビノイド受容体拮抗薬の脳室内および脊髄腔内投与による亜酸化窒素の鎮痛作用に及ぼす影響を検討した。この点では、本年度の目的と次年度以降の目的の一部を達成することができたため、評価は上記のとおりとした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を踏まえ、次年度に予定されていた計画を遂行するとともに、本年度に達成できなかった脳内アナンダミド含量の測定を試みる。次年度に予定されていた計画としては、亜酸化窒素以外の全身麻酔薬、例えばセボフルランなどの鎮静、鎮痛作用に及ぼす脳内アナンダミドの影響を検討する。具体的には、カンナビノイド受容体拮抗薬の拮抗薬を前投与した後で、セボフルランなどを吸入させ、鎮静作用としては正向反射の有無、鎮痛作用としてはテイルフリック時間を測定し、その変化を観察する。本年度に達成できなかった脳内アナンダミド含量の麻酔による変化の検討は、まず、測定に必要な質量分析計の調整を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度当初に予定していた脳内アナンダミドの測定に必要な質量分析計の調整が十分でなかったため、実際の測定ができなかっために次年度使用額が生じた。次年度は、質量分析計の調整を進め、マウスを用いた計測を行う予定であり、次年度使用額は、マウスや試薬の購入費用として使用する。
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