研究課題/領域番号 |
24592307
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
村川 雅洋 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90182112)
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キーワード | アナンダミド / カンナビノイド受容体 / 亜酸化窒素 / 鎮痛 / 急性耐性 / リモナバン |
研究概要 |
脳内には全身麻酔薬と同様に向精神作用と鎮痛作用を有するアナンダミドが存在する。本研究の目的は、脳内アナンダミド系の活動と各種全身麻酔薬の催眠鎮静作用および鎮痛作用の変化を検討し、全身麻酔薬の催眠鎮静作用および鎮痛作用にけるアナンダミドの役割を明らかにしようとするものである。 昨年度、脳内アナンダミドのカンナビノイド受容体CB1の拮抗薬リモナバンを腹腔内、脳室内および脊髄腔内に前投与したWistarラットとプラシボを投与した対照で75%亜酸化窒素吸入下のテイルフリック時間の変化を測定し、亜酸化窒素の鎮痛作用と、その作用に対する急性耐性形成に及ぼす脳内アナンダミドの影響を検討した。その結果、対照群では亜酸化窒素吸入による鎮痛作用が認められ、その作用は吸入30~60分をピークに減弱し、鎮痛作用に対する急性耐性が形成されることが確認された。一方、リモナバン腹腔内および脳室内投与群では、鎮痛作用が発現し、180分間の亜酸化窒素吸入中鎮痛作用が持続した。脊髄腔内投与群では、亜酸化窒素吸入による鎮痛作用が認められなくなった。 上記の結果は、カンナビノイド受容体CB1の拮抗薬リモナバンが亜酸化窒素の鎮痛作用とそれに対する急性耐性形成に影響を及ぼすことを示唆するものであった。しかし、プラシボとしてリモナバンを溶解するDMSOを使用していた。本年度は、その影響を検討するため、同量の生食を腹腔内、脳室内および脊髄腔内に投与してテイルフリック時間の変化を測定した。その結果、いずれの投与経路群でも亜酸化窒素吸入による鎮痛作用の変化はDMSO投与群と差がなく、DMSOが亜酸化窒素の作用に及ぼす影響を考慮する必要はないことが明らかとなった。 したがって、脳内アナンダミドは大脳レベルで亜酸化窒素の鎮痛作用に対する急性耐性形成に関与し、脊髄レベルでは鎮痛作用発現に関与していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画にある脳内アナンダミド含量の測定に用いる質量分析計の準備が遅れており、脳内アナンダミド含量に及ぼす麻酔薬の影響を検討できていない。
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今後の研究の推進方策 |
前年度および本年度の研究成果を踏まえ、次年度に予定されていた計画を遂行するとともに、今までに達成できなかった脳内アナンダミド含量の測定を試みる。次年度に予定されていた計画としては、亜酸化窒素以外の全身麻酔薬、例えばセボフルランなどの鎮静、鎮痛作用に及ぼす脳内アナンダミドの影響を検討する。具体的には、カンナビノイド受容体拮抗薬の拮抗薬を前投与した後で、セボフルランなどを吸入させ、鎮静作用としては正向反射の有無、鎮痛作用としてはテイルフリック時間を測定し、その変化を観察する。本年度に達成できなかった脳内アナンダミド含量の麻酔による変化の検討は、まず、測定に必要な質量分析計の調整を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果の投稿ができず、投稿料、印刷費などがなかった。 成果発表のための校正等に使用する。
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