研究課題/領域番号 |
24592309
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
渡辺 至 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (20534142)
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研究分担者 |
水野 祐介 横浜市立大学, 医学部, 講師 (80433192)
馬場 靖子 横浜市立大学, 市民総合医療センター, 講師 (80453041)
川上 裕理 横浜市立大学, 医学部, 助教 (90407958)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肺高血圧 / 右心肥大 / PACAP / VIP / VPAC2 |
研究実績の概要 |
原発性および慢性肺疾患等による二次性肺高血圧症は、不可逆的な血管損傷に至ると肺移植以外に根本的治療法は無く、周術期のリスクは高い。神経伝達物質pituitary adenylyl activating polypeptide (PACAP), vasoactive intestinal peptide (VIP)は70%の相同性を有し、共に心肺に多く分布している。血管拡張、免疫炎症制御、臓器保護作用を示し、呼吸循環機能に関与しているとされるが詳細な機能は不明である。 近年、VIP遺伝子欠損 またPACAP受容体遺伝子PAC1欠損マウスは肺高血圧を呈すことが示され、更にVIPの経気道投与による治療効果が報告された。以上から、VIP, PACAPは肺高血圧に対し保護的役割を果たしていると推定された。
我々は肺高血圧、右心肥大発症における心、肺組織におけるVIP, PACAP減少及び、その受容体VPAC1, VPAC2, PAC1の機能解明を行った。その結果、肺高血圧における肺組織中のVIP/PACAP発現低下、VPAC1, VPAC2, PAC1の代償的増加を見出した。 そこで次に我々は、肺高血圧に対する各種VIP, PACAPアナログの治療効果を同ラット肺高血圧モデルで検討した。VIP, PACAPは70%のアミノ酸相動性を持ち、VPAC1, VPAC2 受容体を共有している。PACAPは特異的なPAC1受容体にも作用する。血行動態学的な検討から、選択的VPAC2アゴニストが最も効果的に右室圧、心拍出量を改善させることを見出した。我々はこの結果をJ Appl Physiol. 2014 Aug 15;117(4):383-91. doi: 10.1152、Role of VPAC2 receptor in monocrotaline-induced pulmonary hypertension in rats.に発表した。一方、PACAP発現は低下し、PACAP特異的受容体であるPAC1発現は亢進していたが、PACAP自体に右室圧低下作用はなく、心拍出量も増加させなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肺高血圧に対するVIP, PACAPアナログの治療効果をラットモノクロタリン誘発肺動脈モデルで検討した結果、選択的VPAC2アゴニストが最も効果的に右室圧、心拍出量を改善させることを見出した。我々はこの結果を上記のJounal of Applied Physiology に発表した。一方、肺高血圧ラットでは心、肺組織においてPACAP発現は低下し、PACAP特異的受容体であるPAC1発現は亢進していたが、PACAP自体に右室圧低下作用はなく、心拍出量も増加させなかった。PACAPの臓器作用機序も本研究からは明らかではなかった。我々は次の段階として、長期間アゴニストを投与する手段としてレンチウイルスベクターの構築を行う計画であった。そこで、当初予定したPACAPに加え、VPAC2アゴニスト発現ベクターを作成した。肺高血圧に対する導入方法、治療効果を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
長期間アゴニストを投与する手段としてレンチウイルスベクターの構築を行う計画である。当初予定したPACAPに加え、VPAC2アゴニスト発現ベクターを作成し、肺高血圧に対する導入方法、治療効果を検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
各種VIP, PACAPアナログの肺高血圧に対する治療効果を検討した結果、当初予定したPACAに加え、VPAC2アゴニストの有効性が見出された。その結果、長期投与の手段として計画したウイルスベクターの構築を含む計画を一部変更した。これにより予定していた肺高血圧ラッドを用いた結構力学的な評価を一部行わなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
肺高血圧への効果の確認されたVPAC2アゴニスト及び当初予定したPACAPの長期投与効果を検討するため、ウイルスベクター及び薬物の長期持続・間欠投与を行う。血行力学的に肺高血圧へ治療効果を検討する。
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