本研究課題は、α波を中心とした脳神経ネットワーク制御から、麻酔中の意識状態変化を検討するものである。術後譫妄を来しやすい高齢者や認知症症例を対象として、麻酔周術期の脳波を収集し、脳神経ネットワークの変化を若年成人群と比較検討してきた。 その結果、高齢者の脳波は若年成人群に比べて低振幅で脳波のパワーが小さく、また浅麻酔時においても低周波成分優位である上、麻酔鎮静時の前頭におけるα波、αspindle wave の形成が弱いことが明らかとなった.更に、高齢者では、吸入麻酔濃度変化に対する脳波の反応性が小さいことがわかった. これらから、高齢者における、脳神経細胞数、シナプス密度の低下、神経伝達物質の減少等によるα波を中心とした脳機能ネットワークの変容が示唆された. これらの高齢者における周術期の脳波の特殊性に関する論文は、複数の雑誌に掲載、または掲載が確定している.更に、高齢者における脳内ネットワークの変化と麻酔依存性変化に関する論文を現在投稿中である.
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