研究課題/領域番号 |
24592318
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
坂本 篤裕 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30196084)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 吸入麻酔薬 / 静脈麻酔薬 / 遺伝子発現 / miRNA / TLDA |
研究概要 |
平成24年度は全身麻酔により既知のmicroRNA (miRNA)発現に影響を及ぼすかを、麻酔薬別、部位別に検討することを計画した。まず各臓器でTaqMan Low-density Array (TLDA) studyにより包括的にmiRNA発現が捉えられるか、また中枢神経系の部位による発現変化が認められるのかを中心に検討を行い、4つの知見を得ることができ、それぞれ学術論文にまとめた。いずれも既知の373種類のmiRNAをTLDA分析により包括的に発現変化を測定した。1)肝臓においてはmiRNAの47%の発現を認め、セボフルラン麻酔あるいはプロポフォール麻酔により26%が変化し、両麻酔薬間で変化に相違を認めた。2)肺において57%の発現を認め、セボフルラン麻酔により抗炎症作用を有するとされるmiRNAを含め17%に発現変化を認め、吸入麻酔薬による肺保護作用が推察された。次に中枢神経系におけるmiRNA測定につき、発現自体がTLDAで測定できるか、また病態変化により発現変動が起こるかを検討した。3)海馬において64%の発現を認め、座骨神経慢性絞扼性障害(CCI)により14%に変化を認め、末梢神経での障害がmiRNAを介して中枢感作を起こす可能性を示唆した。4)脊髄後角において30%の発現を認め、CCIにより17%に変化を認めた。以上の結果は、麻酔により各臓器におけるmiRNA発現に影響を及ぼすこと、麻酔薬の違いによりその発現変化に相違があること、および中枢神経系の病態変化によりmiRNA発現変動をTLDA分析で求められることを明らかにし、中枢神経各部位における麻酔薬の影響を確実に把握する基本的データを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の目的は、全身麻酔により既知のmiRNA発現に影響を及ぼすかを、麻酔薬別、部位別に検討することであり、計画としては、Wisterラットを対象に、対照群とセボフルラン群、イソフルラン群、プロポフォール群、デクスメデトミジン群の4つの麻酔群に分類し、全身麻酔前後での脳幹部、大脳皮質、髄質、視交叉上核部でのmiRNA変動を測定することであった。サンプリングならびに遺伝子プロファイリングは「研究実績の概要」に示したごとく、基本的データ収集が上手くいっている。部位別のプロフィリングならびに麻酔薬間での相違については、部位別では海馬や脊髄等の部位別サンプリングを成功させ、また26年度の第三計画であった他臓器での麻酔薬のちがいによるmiRNA発現プロファイリングを先行終了した。麻酔薬による脳の部位別発現測定は、次年度に持ち越したが、全体としてほぼ計画通りに順調に研究が遂行されている。
|
今後の研究の推進方策 |
25年度に持ち越した、大脳皮質等におけるmiRNA発現測定を、麻酔薬の種類別に検討する。その結果を基に、一部位(予想としては脳幹部)に限定して、2種類の麻酔薬(セボフルランとプロポフォール)によるmiRNAへの影響を調べる。同様であれば、全身麻酔全体として影響を統計学的有意差が得られる数まで実験を追加する。測定装置および測定方法は24年度同様である。 上記結果より、全身麻酔に最も影響を受けたmiRNAの順番にそのmiRNA発現レンチウイルス粒子とantisense miRNA発現レンチウイルス粒子を作成あるいは購入し、全身麻酔下に投与(直接あるいは定位脳手術下での脳幹部注入)を行い、麻酔作用(意識レベルと体動、温熱刺激およびピンチコックによる鎮痛レベル測定)への影響を測定する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
24年度と同様に、すべて消耗品費に充当する。microRNA網羅解析試薬およびキット(Applied Biosystem社、Isolation kit、Megaplex Pools、TaqMan Array、RT kit、No Amp Erase等)および実験動物(ラット)を購入する。
|