研究課題
集中治療管理過程における生体炎症のモニターは病態予後の予測に大いに役立つと考えられている。現在の周術期モニターシステムは、薬物の投与時間と連動して血圧や血ガス等の変動を経時的にモニタリングすることを可能にしているが、惹起される炎症応答は個体により大きく異なるので、生体細胞を用いて炎症等を定量的に解析することが出来れば、生体急性炎症メカニズムの解明ひいては臨床応用に非常に有用と思われる。本研究では、生体急性炎症のモニター指標として、生体免疫機能の最前線に位置し、生体炎症応答を監視するマクロファージを含めた血球細胞に着目し、炎症応答の評価法を検討する。これまでの研究により、申請者らがこれまで解析してきた細胞内二次メッセンジャー代謝酵素ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)は生体ストレス応答に関与する可能性が示唆されているので、この分子ファミリーの動態を指標とした生体急性炎症のモニタリングを行う。昨年度にヒト正常血球細胞におけるDGKファミリーの発現を検討した結果、正常ヒト血液サンプルから、好中球、単球、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、B細胞を分離し、RT-PCR法を用いて、DGKファミリー分子の発現を解析した。その結果、DGKαはCD4陽性T細胞およびCD8陽性T細胞に豊富な発現が認められた。DGKγは単球に、またDGKζはB細胞以外の細胞での発現が観察された。一方、DGKεも大部分の細胞に発現が認められたが、とくにT細胞系における発現が顕著であった。本年度は、炎症応答における動物モデルを作製し、免疫細胞が豊富に見られる脾臓の解析を行った。その結果、グラム陰性菌細胞壁外膜の構成成分リポ多糖(LPS)投与群においてDGKεmRNAの発現が有意に増加することを見出した。今後は、ヒト血球系細胞株を用いて、細胞毎の炎症応答解析を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、生体急性炎症のモニター指標として、生体免疫機能の最前線に位置し、生体炎症応答を監視するマクロファージを主とした血球細胞に着目し、炎症応答の評価法を検討することを目的としている。昨年度は血液細胞の分離とmRNAの抽出、RT-PCR法によるDGKファミリーの発現解析を行った。今年度は、炎症の動物モデルを作製し、免疫細胞が豊富に見られる脾臓を用いてDGK mRNAの発現解析を行った。正常細胞の実験から、個体レベルに実験に研究が進展しているので、研究計画はおおむね順調に進行していると評価した。
昨年度および今年度に得られた研究データを基に、今後は分離した血球細胞、あるいは各々の血球細胞の培養株を用いて、細胞レベルでの経時的な炎症応答を解析する。さらに、得られた知見を基に、DGKノックアウトマウスを用いて、再び個体レベルにおける炎症応答を解析する。
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Biochem Biophys Res Commun
巻: 432 ページ: 40-45
10.1016/j.bbrc.2013.01.088