背景:扁桃体は痛みの情動の形成に重要であることが知られている。扁桃体中心核はほぼ抑制性神経で構成されているが、扁桃体中心核内抑制性微小伝達がどのようになっているのかはよくわかっていない。 目的:扁桃体中心核(CeA)外包亜核・外側亜核(CeL/C)に入った情報は出力核であるCeA内側亜核(CeM)からPAGや迷走神経背側複合体などに伝えられ、情動関連応答を誘発する。今回、ストレスホルモンのひとつであるノルアドレナリン(NA)がCeAの神経細胞伝達にどのような影響を与えるかを明らかにした明らかにした。 方法:4-8週齢のC57BL/6Jマウスの急性脳スライス標本を作製し、CeMの神経細胞からホールセルパッチクランプ法で膜電流を記録した。薬理学的にGABAA受容体を介する自発性抑制性シナプス後電流(sIPSC)を単離記録し、NAを灌流投与しその振幅と頻度の変化を解析した。Ca2+イメージングはFluo-4を用い共焦点レーザー顕微鏡で観察した。 結果: NAがβ受容体を介してCeMの抑制性神経伝達を増強させることを明らかにした。その作用にはCeL/Cの神経細胞が興奮が関与していると考え、Ca2+イメージング法を用いてNAがCeL/Cの神経細胞内のCa2+濃度を上昇させることを確認した。NAによるCa2+濃度の上昇はテトロドトキシンではCa2+フリー灌流液では抑制されなかったが、sarcoplasmic reticulum calcium-ATPase inhibitorのcyclopiazonic acidによって完全に抑制された。このことから、NAによるCa2+濃度の上昇にはGq-共役型のα1 受容体の関与していることが示唆された。そこでα1 受容体作動薬のPhenylephrineを灌流投与したところ、CeMでのsIPSCの頻度が有意に増加し、α1 受容体拮抗薬のPrazosinの投与により、頻度・振幅ともに抑制された。これらの結果から、NAによる扁CeMの抑制性神経伝達にはα1受容体を介したCeL/Cの神経興奮と、責任細胞は不明だが、β受容体を介した作用が関係していることがわかった。
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