研究課題/領域番号 |
24592335
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
北川 裕利 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (50252391)
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研究分担者 |
山崎 登自 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (20116122)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | TRPCチャネル / 心筋保護 / 虚血再灌流傷害 / マイクロダイアリシス / 吸入麻酔薬 |
研究概要 |
吸入麻酔薬が心保護効果を有することは多くの検証により証明されているが、そのメカニズムはよくわかっていない。我々は細胞障害の重要な因子の一つであるCa2+動態に着目し、心筋虚血再灌流時に生じる生理現象モデルであるCa2+パラドックスにはTRPC(transient receptor potential canonical )チャネルが関与していることを報告した。本研究はこの虚血時TRPCチャネルの再灌流障害に対する役割についてさらに詳細に解析し、その結果を基に吸入麻酔薬による心保護効果のメカニズムを解明することである。研究1年目である本年はTRPCチャンネル過剰発現ラットモデルの作成のみに取り組んだ。実際にはTRPCチャンネルの過剰発現マウスの作成を目指してtransverse aortic constriction(TAC)手術を行った。今までの報告で成人マウスの大動脈を結紮することで、心臓に圧負荷をかけ5週間の後に心肥大とともにTRPC1の過剰発現を生じることがわかっているがラットでは報告が少ない。しかしながら、冠動脈閉塞および開放を行う手法を用いるためにはラットで同様のモデルを作成することが必要である。現時点ではTAC手術後においてラットの心肥大が上手く作成できず、TRPCチャンネル過剰発現をウェスタンブロットで確認する作業にまで至っていないのが現状である。 また、それらの検証と並行して、in vivoでの虚血再灌流障害に対するTRPCチャンネルの影響を調べるために、TRPCの拮抗薬(2-APB, SKF9635, Lanthanum)前処置の有無で冠動脈閉塞開放による心筋間質逸脱タンパク質濃度応答を比較検証しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では2年間かけて、ラットにtransverse aortic constriction (TAC)手術を行なってTRPC発現ラットを作成することを目指している。現時点ではTAC手術後に死亡や心肥大ラットが上手くできず、試行錯誤中である。このラット作成はもっとも難しい部分であり、まだ確立されていないが、計画の範囲内である。
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今後の研究の推進方策 |
ラットでのtransverse aortic constriction (TAC)手術を成功させることが主目標である。そのためには手術の精度を高める必要がある。ラットできなかった場合はマウスへ移行と考えるが、現時点ではもうすこしラットでの実験を進めて行きたい。また、それと並行して、TRPCチャネル拮抗薬を使用した際の虚血再灌流傷害に対する効果について検証し、TRPCのin vivoでの役割について検証する。さらに、TRPCチャネルを遮断することと同様の現象が各種Ca2+チャネルやNa2+/Ca2+交換機能を遮断することでも生じるかどうかを確かめ、さらにそれらの交互作用の有無についても検証する予定である。 上記計画のうち、まずはラットでのTAC手術成功に向けて取り組む。そして作成したTRPC過剰発現ラットの単離心筋細胞におけるTRPCチャンネルの発現、機能、局在をウェスタンブロット法およびPCR法により確認、検証する。次に、Ca2+動態修飾が虚血再灌流傷害に与える影響を調べるために a-d)の検討を行う。 a) L 型Ca2+チャネルによるCa2+流入→verapamil により検証 b) Na+/Ca2+交換機転(NCX)によるCa2+流入→KB-R7943 により検証 c) 筋小胞体(SR)からのCa2+ 放出→カフェインにより検証 d) TRPC チャネルによるCa2+流入→2APB, Gd3+, La3+により検証。また、in vitroの研究で吸入麻酔薬(セボフルラン)がTRPCチャネルブロッカーとして作用することから、この効果がin vivoでも有するかどうかについても並行して検証していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画は現有設備で概ね遂行出来るがラットの大動脈結紮手術(TAC手術)の手技を向上させるために、多くの実験動物を購入する必要があり、そのための飼育費等の確保と、手術に伴う試薬や器具に研究費の多くを割り当てる。またTAC手術の成否によって、当初の実験薬品や測定試薬費を変更する必要が生じる。その対応策として次年度の経費の主たる配分は実験の進度に合わせて柔軟に変更できるよう実験動物、実験の試薬などの購入を細分して行い、その他の諸費用はできるだけ圧縮する予定である。
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