研究課題/領域番号 |
24592335
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
北川 裕利 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50252391)
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研究分担者 |
山崎 登自 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (20116122)
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キーワード | TRPCチャネル / 心筋保護 / 虚血再灌流傷害 / マイクロダイアリシス法 / 吸入麻酔薬 |
研究概要 |
吸入麻酔薬に心保護効果があることが、分子レベルや臨床レベルで行われているが、そのメカニズムは単一ではなく、様々な方面から検証が必要である。我々は、以前より細胞傷害の重要な要因としてCa2+動態に着目し、検証を進めたところ、心筋虚血再灌流時に生じる生理現象を模したCa2+パラドックスがTRPC(Transient receptor potential canonical)チャネルにより制御されていることを分子レベルで解析し報告した。この制御機構がin vivoレベルでも作用しているのかどうかについて検証することが本研究の目的である。研究2年目に当たる本年は、1年目と同様にTAC(transverse aortic constriction)によりTRPCチャネル過剰発現ラットモデルの作成を行ってきた。本手術法はマウスでは確立されているが、ラットでは確立されていない。そこで1年目はまずTAC手術で、どの場所をどの程度結紮すれば4週間の生存に耐えられるのかについて検証した。2年目は、その手術後の心負荷の程度を心臓の重量を用いて検討し、手術の正確性を含めた手法を確立できるよう推進した。また、虚血再灌流傷害に対するTPCPチャネルの影響を調べる目的でTRPCチャネルブロッカーである2-APB, SKF9635, Lanthanumを前処置したラットの冠動脈閉塞開放時の心筋間質逸脱タンパク質濃度応答を検証した。その結果、in vivoレベルにおいてもTRPCチャネルが虚血再灌流傷害に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では2年間かけてラットのTRPCチャネル発現ラットの制作を目指している。現時点でやっとTAC手術が安定し、心肥大ラットが制作できるようになったところである。最終年にはTRPC過剰発現についてウエスタンブロット法を用いて確認する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である本年の研究目標は1)TRPCチャネル過剰発現ラット作成法の確立、2)TRPCチャネルの虚血再灌流時の役割(in vivoマイクロダイアリシスを用いて)の検証である。特にTRPCチャネル過剰発現ラットにおいてはTRPCチャネルブロッカーの効果がより強力に得られるということをin vivo実験にて確認できれば、臨床的応用にも繋がると期待できる。さらに吸入麻酔薬にもTRPCチャネルブロッカーとしての作用があることがわかってきており、麻酔薬暴露の有無による虚血再灌流傷害の程度を比較検討することで、その保護効果も検討していきたい。またCa2+動態のTRPCチャネル以外の修飾因子についても時間の許す限り検証する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
理由 研究計画ではラットをTAC手術により、心筋に圧負荷をかけることによりTRPCチャネルを過剰発現させ、その確認検証実験のために試薬・機器を使用する予定であった。そのため、それらの予算を当初2年間で使用する予定であったが、TAC手術の確立に手間取ったために、3年目に繰り越すこととなった。また、高額な設備機器は研究の進捗状況を見ながら最新のものを購入したいために、次年度送りとした。 ラットに対するTAC手術は技術的に安定したため、研究の最終年である本年はTRPCチャネル過剰発現を確認する段階となった。よって次のステップとして、TRPCチャネル過剰発現を確認するための試薬・機器・手術器具購入に費用を当てる。さらにTRPCチャネル過剰発現ラットにおいては同ブロッカーの効果がより強力に得られることが期待できることから、TRPCチャネル過剰発現ラットにおいて冠動脈閉塞解除を行い、その細胞傷害保護効果を用いて検証する。このTAC手術後ラットの冠動脈閉塞開放手技は実験完遂率が格段に低くなることが予備実験で判明し、実験動物の購入や手術器具の整備に繰越費の大部分を充当する予定である。また、TRPCチャネルブロッカーとしての吸入麻酔薬の効果と有用性を探り、Ca2+動態のTRPCチャネル以外の修飾因子についても検証したい。
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