研究課題/領域番号 |
24592339
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
横山 正尚 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (20158380)
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研究分担者 |
河野 崇 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (40380076)
矢田部 智昭 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (60437720)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | BDNFエクソン / 痛み / 遺伝子療法 / 痛み評価 |
研究概要 |
本研究の主眼は、神経障害性痛モデルの痛みを新方法により詳細に再評価し、痛みのニューロモジュレータとして機能する脳由来神経栄養因子(BDNF)を痛みのマーカーとして利用する。その上で、BDNFをターゲットとした痛みの遺伝子療法を目指すものである。 初年度はラット神経障害性モデル(L5脊髄神経結紮)を作成し、コントロールモデルと痛み行動の違いを詳細に判定した。すなわちvon Frey刺激による反応とピン刺激による反応をそれぞれのモデルで調べ、単なる反射反応、弱い痛み反応、強い痛み反応に分類する研究に着手した。その結果、従来のvon Frey刺激では陽性と判定されるが、ピン刺激では反射反応や弱い痛み反応と評価されるラットがかなりの割合であることが認識され、従来の痛み判定の問題点が明らかとなった。 すなわち、従来の基礎研究レベルで痛み反応と評価されたが、真の痛み反応を表現していない動物を使用して、痛み関連物質を研究していた可能性が示唆され、その結果での痛み関連物質の研究や鎮痛薬の開発に問題があった可能性を明らかとした。以上を含めた結果をシンポジウムで学会発表した(2012年度日本麻酔科学会:Analgesic effectsかAnimalgesic effectsか?)。 また、脊髄レベルおよび脳レベルにおける痛みで特徴的に発現するBDNFエクソンを同定するための予備研究として、MNDAおよびCOXなどの定量研究を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の当初の計画は以下であった。 1) 神経障害性痛モデルの作成と痛みの行動の詳細な評価:ラット神経障害デル(L5脊髄神経結紮)において、von Freyフィラメントおよびピン刺激で疼痛反応を詳細に判定し、痛み行動なし、弱い痛み、強い痛み行動群に分類し、痛みの強さ評価を客観的にスコア化する。 2) 痛み行動の強さと脊髄後根神経節(DRG)での各BDNFエクソンの発現量の関係:1)で分類した群で、取り出したDRGから抽出したBDNFの総量ならびに各エクソンの発現量を測定し、最も痛み行動と相関するエクソンを特定し、痛みの測定マーカーの候補とする。 上記計画のうち、1)は達成されているが、2)に関してはBDNFエクソンの発現量の定量までは至っていない。しかし、その基礎部分までは達成できており、ほぼ年間予定どおりの達成度であり、結果として学会発表もできた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の結果を受け、最も痛み行動と相関するBDNFエクソンを特定し、痛みの測定マーカーの候補とする。この特定したBDNFエクソンをもとにBDNFデコイの作成を次年度の大きな目標とする。具体的方策としては次の段階を計画する。 a) 特定したBDNFエクソンの転写調節領域を特定する。b) 特定した領域からいくつかのフラグメントに分け、DNAデコイ候補を作成する。c) 作成したDNAデコイ候補を用い、BDNFプロモータ部の転写活性の抑制を測定する。d) 結果を受けて、フラグメントをプラスミドに組み込み、PCRにより増幅、精製、調整する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度の経費が約75万円程度未使用となった原因は、第一に機器の購入を今年は見送ったことによるところが大きい。従来からの機器の使用で本年度は乗り切れたが、来年度には新規購入の可能性が大きい。 上記の様に、本年度の未使用分は翌年度の機器購入という本来の形に使用する可能性が大きく、研究計画は大きく変更する予定はない。順調に研究計画は進んでおり、従来の形で予算執行の予定である。
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