• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

GLP-1の薬理活性を利用した新しい周術期血糖管理法の検討

研究課題

研究課題/領域番号 24592340
研究種目

基盤研究(C)

研究機関高知大学

研究代表者

河野 崇  高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (40380076)

研究分担者 横山 正尚  高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (20158380)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードインスリン分泌 / 吸入麻酔薬 / 静脈麻酔薬 / グルカゴン様ペプチド-1 / グルコース / 耐糖能異常 / 膵島灌流試験
研究概要

本研究課題の主要な目的は, 麻酔・鎮静薬がGLP-1の分泌動態および薬理活性に与える影響とその機序を明らかとすることである。特に, 平成24年度では, 内因性GLP-1の分泌動態に及ぼす各種麻酔・鎮静薬(イソフルラン, プロポフォール, デクスメデトミジン)の影響をin vivoモデルを用いて検討した。
まず, 無麻酔のラットに対して, グルコース(150mg)の経口負荷が内因性GLP-1を10pM前後の基礎分泌量から20-30pMまで増加することを明らかとした。このモデルを用いて, 各種薬物の影響を検討した。イソフルランについては, 1.0MAC相当の濃度の吸入(自発呼吸)によりグルコース負荷による内因性GLP-1分泌増加が有意に抑制された。イソフルランのGLP-1分泌抑制の程度は, イソフルランの耐糖能異常と相関していたことから, イソフルランによる内因性GLP-1分泌抑制作用は, イソフルラン麻酔時のインスリン分泌抑制作用の機序の一つと考えられる。一方, 起立反射が抑制される最小量のプロポフォールおよびデクスメデトミジンは, グルコース負荷による内因性GLP-1分泌増加に影響を与えなかった。プロポフォールやデクスメデトミジンのインスリン分泌能に及ぼす影響についての報告はこれまでにないが, 今回の結果からは, これらの薬剤は, イソフランと異なりGLP-1を介するインスリン分泌に影響を与えないものと推測される。
以上のin vivo 研究に加えて, 膵島灌流試験の予備研究を行った。その結果, 外因性GLP-1の投与による一過性のインスリン分泌増加を引き起こす作用を再現することができた。今後, 膵島灌流試験においてもin vivo 研究と同様な傾向がみとめられるかどうかの検討を行い, 来年度以降の詳細な機序や各種麻酔薬間の相互作用の検討につなげたいと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。ただし, 今回は, イソフルラン, プロポフォール, およびデクスメデトミジンについて検討したが, 他の麻酔薬 (セボフルラン, エトミデート, チアミラール) についてはまだ研究を行えていない。セボフルランについては実験用気化器を用意できており予備実験も終えていることから期間内に実験を行えると考えられる。エトミデートに関しては, 日本では承認されていない静脈麻酔薬であり, 薬剤の調達に時間が必要である。薬剤が調達でき次第に実験に取りかかる。チアミラールについては短時間作用であることからin vivo研究では麻酔投与量に設定が困難であることが分かった。(今回, 静脈麻酔薬の投与量の設定は起立反射が消失する最小の投与量とした。) チアミラールの影響に関する検討は, in vitro試験 (膵島灌流試験および電気生理試験) により平成25年度以降に他の静脈麻酔薬との比較検討を行うことにした。

今後の研究の推進方策

平成24年度に行ったin vivo研究の成果に基づいて, in vitro試験 (膵島灌流試験および電気生理試験) により, 麻酔・鎮静薬がGLP-1の分泌動態および薬理活性に与える影響とその機序を明らかとすることを目的とする。
具体的には, 1) in vitro 膵島灌流試験により各種麻酔・鎮静薬がインスリン分泌作用に及ぼす影響とGLP-1の相互作用を検討する。2)外因性GLP-1のインスリン分泌に対する各種麻酔・鎮静薬の影響を検討する。3)in vitro パッチクランプ法によりGLP-1と麻酔・鎮静薬の膵臓β細胞での相互作用の機序を電気生理学的に解明する。4)以上の結果を基に, 麻酔・鎮静下のブドウ糖負荷による血糖調節に対する外因性GLP-1持続投与の安全性および有効性に関してウサギモデルを用いて検討する。
in vitro 膵島灌流試験は, 平成24年度の研究期間内に予備研究が終了しており, 研究を行う準備は整っている。また, 試薬等の調整も終えている。
in vitro パッチクランプ法に関しては, 研究代表者がこれまで一貫して行ってきた実験手技を応用して行うものであり, 培養細胞の準備ができ次第に実験を開始できると考えている。培養細胞の準備に関しては, 過去の文献を検討して現在その条件の調節を行っている。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度に行う予定であった各種麻酔薬・鎮静薬のの中で, エトミデートに関しては, 日本で承認されていない薬剤でありその調達に時間が必要で, 平成24年度内に購入できずその分の費用が次年度使用額に示されている。現在, エトミデートに関してはTocris Bioscience社(Ellisville, MO)から購入予定となっている。平成25年度内にエトミデートに関する検討は実施する予定となっている。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Biophysical and pharmacological properties of glucagon-like peptide-1 in rats under isoflurane anesthesia.2012

    • 著者名/発表者名
      Kawano T, Tanaka K, Chi H, Eguchi S, Yamazaki F, Kitamura S, Kumagai N, Yokoyama M
    • 雑誌名

      Anesth Analg

      巻: 115 ページ: 62-9

    • DOI

      10.1213/ANE.0b013e318253cbf0

    • 査読あり
  • [学会発表] Effects of Dexmedetomidine on Insulin Secretion From Rat Pancreatic β Cells2012

    • 著者名/発表者名
      D Yamanaka, T Kawano, S Eguchi, H Chi, H Iwata, F Yamazaki, M Yokoyama
    • 学会等名
      American Society of Anesthesiologists Annual Meeting 2012
    • 発表場所
      Washington Convention Center (USA)
    • 年月日
      20121013-20121017
  • [図書] Patch Clamp Technique (Edited by Fatima Shad Kaneez): Chapter 4; Single-channel properties2012

    • 著者名/発表者名
      Takashi Kawano
    • 総ページ数
      73-90
    • 出版者
      In Tech

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi