研究課題/領域番号 |
24592342
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
神田橋 忠 九州大学, 大学病院, 助教 (10335961)
|
研究分担者 |
徳田 賢太郎 九州大学, 大学病院, 助教 (10419567)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 硫化水素 / 全身性炎症 |
研究概要 |
本研究の目的は、エンドトキシン(LPS)誘発性全身性炎症によって生じる心筋障害に対して、硫化水素(H2S)が保護効果を発揮するのか、その作用メカニズムを生体および分子レベルで解明することである。この目的を達成するため本年度は、①全身性炎症反応が内因性H2Sレベルに及ぼす影響の解明、②生体内H2Sレベルの変化が全身性炎症反応による心機能障害に及ぼす影響を評価、という点について研究を進める予定であった。 平成24年度は、まず海外共同研究者(マサチューセッツ総合病院麻酔科市瀬史准教授)が実施した実験により本研究の研究内容の一部の結果が得られた。つまり、マウスにエンドトキシン(LPS)を投与して誘発された全身性炎症反応によって、血中H2S濃度が減少することが明らかにされた。定量性に問題のあるメチレンブルー法ではなく、新規に開発された精度の高いとされるモノブロモビマン法によって、全身性炎症反応ともなう血中H2S濃度の変化をとらえることができたことは、本研究の新規性を高めることができたと考える。この実験結果は国内外の学会・研究会で発表を行った。しかし、心筋におけるH2S濃度の定量についてはまだ完了しておらず、今後の実験で行う必要がある。一方で、当施設では全身性炎症反応の誘導を行うための条件検討が終了しなかった。そのため、まずは全身性炎症反応を惹起する条件を再度検討する必要がある。その上で当初予定していたように、全身性炎症反応による内因性H2Sレベルの変化が心機能障害に及ぼす影響を検討する必要がある。 また、本研究に関連した文献検討の結果として、H2Sに関する総説を商業誌に掲載することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は全身性炎症反応の誘導を行うための条件検討が終了しなかった。そのため、まずは全身性炎症反応を惹起する条件を再度検討する必要がある。海外共同研究者および分担研究者が行っていた基礎実験のデータをもとに条件を設定していたが、再検討する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
マウスにおいて全身性炎症反応を惹起する条件をまず検討した上で、それが心筋でのH2Sレベルに及ぼす影響を明らかにする。全身性炎症モデルで組織試料を採取し、コントロール群と以下を比較する。H2S産生酵素(CSE)のmRNAおよびタンパクレベルででの発現を調べる。最近、H2Sの代謝系も注目されてきており、生体内H2S濃度の変化は産生系だけでなく代謝系の変化にも強く制御されているという発表が続いている。このためH2S代謝酵素(SQR、ETHE1、Rhodanese等)の発現についても検討が必要と考える。次に、生体内H2S濃度の変化が全身性炎症反応による心機能の障害に及ぼす影響を評価する。野生型マウスで、生体内H2SレベルがCSE阻害薬の使用により減少、H2S供与体の投与により増加することを確認する。また、CSE欠損マウス、心筋特異的CSE過剰発現マウスでの生体内H2Sレベルを確認する。その上で、それら野生型およびCSE遺伝子組み換えマウスにLPS投与を行い、心臓の炎症反応の組織学的あるいは生化学的評価を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題ではマウスを使用した実験系を用いるため、マウスの購入・飼育に関する費用が必要である。さらに次年度は遺伝子改変マウスを海外共同研究者から供与を受ける予定であるためその輸送費が必要となるうえ、この遺伝子改変マウスの場合繁殖が比較的難しいため多くのペアを作って繁殖させる必要があり、その費用も計上している。 炎症反応の生化学的評価のためのアッセイには各種化学物質あるいはアッセイキットを使用する必要があり、それらの購入費用も計上している。 次年度まで煮えられた知見の一部は国内外での学会で発表する予定であり、出張費も計上している。
|