本研究の目的は、エンドトキシン(LPS)誘発性全身性炎症によって生じる心筋障害に対して、硫化水素が保護効果を発揮するのか、その作用メカニズムを生体および分子レベルで解明することである。本年度は昨年度達成することのできなかった、in vivoでの硫化水素ガスの吸入による実験系での硫化水素の効果の検討ではなく、①in vitroでの実験系の構築、さらに②硫化水素ガス吸入ではなく硫化水素供与体の投与による硫化水素の効果の検討および心筋保護作用に関するメカニズムの解明、について計画を進める予定であった。 平成26年度は上記①in vitroにおける全身性炎症反応の誘導を行うための条件を、新規に開発中の硫化水素供与体の使用も含めて検討した。また本研究課題においては、生体内硫化水素濃度のアッセイも鍵となると考えられるため、そのアッセイの条件検討も行った。しかしながら、本研究期間中には一定した結果を得ることができなかった。この原因として、実験施設の一時移転を含む実験環境の変更が大きな要因として挙げられる。今後引き続いて本課題内容にそった研究を押し進めていく予定である。 なお本研究に関連した文献検討の結果として、硫化水素の治療薬としての臨床応用に関する総説を商業誌に投稿しており、今後掲載予定である。また、分担研究者も共著者として参画した本研究の関連研究結果が、学術誌に掲載された。
|