研究課題/領域番号 |
24592346
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
恒吉 勇男 宮崎大学, 医学部, 教授 (90301390)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 血管反応性 / ショック / ホルモン / 敗血症 |
研究概要 |
①周手術期におけるインスリン反応を検討する目的で、1,5-アンヒドログルシトールによる周術期の血糖評価の有用性について調べた。 【背景】1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)はポリオール(グルコースの近似物)の一種で、主に食餌中から体内に吸収され貯留される。通常、血中濃度は一定に保たれるが、高血糖により尿糖をきたすと腎尿細管での再吸収がグルコースによる競合阻害をうけ低下する。我々は、1,5-AGが周術期の血糖評価の指標となりうるかもしれないという仮説を立て検証を行った。【方法】肝臓切除術を予定され、手術後に集中治療管理を行い、手術前から手術後数日間にわたり血液検査を計画された患者を対象とした。1,5-AGの測定は計画された血液検査終了後の検体を用いて測定した。術前の絶飲食時間、麻酔方法、輸液内容に関しては全て担当麻酔科医に一任した。【結果】38名の非糖尿病患者と19名の糖尿病患者を対象とした。患者背景に有意差は認めなかった。糖尿病患者では術前1,5-AGは非糖尿病患者に比して有意に低値であった。非糖尿病患者、糖尿病患者とも1,5-AGは術前と術翌日では有意に低下した。非糖尿病患者では1,5-AGの低下率は術当日の血糖上昇率と有意な相関が認められたが、糖尿病患者では認められなかった。【考察】糖尿病患者で1,5-AG低下率と血糖上昇率に相関が認められなかったのは、術前1,5-AGが低値であったため血糖変動を反映しきれなかったのではないかと考えられた。【結語】非糖尿病患者において1,5-AGの測定は手術当日の血糖評価の指標として有用であると考えられた。 本研究は現在投稿中である。 ②バソプレシンおよびノルアドレナリン等の血管反応性に関する参考書、および麻酔学に関する教科書を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに獲得した実験データをもとに、克誠堂出版社より出版予定である心血管作動薬にノルアドレナリン、バソプレシンを執筆した。 血管平滑筋のMyogenic response に関する研究は、時間的制約がありやや遅れ気味である。今後挽回したい。 敗血症性ショック時の血管反応性に関する研究は、ラット血管を用いて行っている。現在、データを収集中である。
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今後の研究の推進方策 |
アンギオテンシンのタキフィラキス反応に対するへパリンの影響について アンギオテンシンは、強いタキフィラキスを生じ、血管収縮作用が減弱することを報告しているが、そのメカニズムは明確ではない。近年、興味深い研究として、このアンギオテンシンのタキフィラキスがへパリンによって抑制されることが報告されている。しかしながら、ヒト血管においては、その反応性に関しては未だ検討されていない。へパリンが、アンギオテンシンの収縮に関与するか否かを明らかにすることは、へパリンが臨床で頻用する薬剤であることからも特に重要である。今後、へパリンが、アンギオテンシンのタキフィラキス反応を抑制するのか等尺性張力実験で検討し、さらにその効果が臨床使用量のへパリンで発現するか検討する。 動脈グラフトのスパズムの検討ならびに血管拡張薬の効果に関する検討 一般的に、CABGで用いられる動脈グラフトは、内胸動脈、橈骨動脈、胃大網動脈であるが、各々の血管は、弾性動脈、筋性動脈、弾性筋性の中間動脈といった異なった性状を持っている。これらのことは、薬理作用や生理学的反応が各々のグラフトで異なることを示唆している。本実験系を用いて、これら3種類のグラフトに関する収縮・弛緩作用を検討し、臨床的上問題となるグラフトスパズムのメカニズムと治療・予防法に関するデータを集積する。 内因性ホルモンの手術およびショック時の活性と動態に関する研究 血管反応性に影響を与える生体内ホルモンの麻酔やショック時の変動に関して検討を加える。具体的テーマは以下のものとする。血管作動性ホルモン分泌の変化を解析し、麻酔・手術侵襲がホルモン分泌に及ぼす影響について検討する。麻酔時に糖負荷テスト等を通じて耐糖能の変化を検討する。あわせて、代謝に関連するホルモンとの分泌動態を比較し、その影響を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
実体顕微鏡(ニコンSMZ660) 800,000円 昨年度の繰越金を合算して購入を予定する。 その他、消耗品、薬品関係 400,000円を予定している。
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