研究テーマ①筋原性血管収縮反応に関する研究 以前米国ワシントン大学留学中に発見した、出産直後のマウス胎児から摘出した臍帯動脈において、血管反応性を測定した実験結果の解析とデータのまとめを行った。その結果、臍帯動脈は、大腿動脈、内頚動脈、大動脈に比較して、強力な血管収縮作用を発揮し、また血管内腔の加圧を加えると筋原性収縮反応を惹起することが判明した。この筋原性収縮反応は潅流液中のカルシウムを除去すると消失することから、カルシウム誘発による血管収縮反応であることが明らかとなった。またNO阻害薬は筋原性収縮反応を増強することから、NOが収縮反応を抑制または制御していることが判明した。さらに潅流液の温度を変化させた際に、低温では筋原性収縮反応が減弱した。このことより、筋原性収縮反応は、体温の変化に敏感に反応する可能性が示唆された。 研究テーマ②内因性血管作動性ホルモンの手術およびショック時における血中濃度の変化について 手術患者および集中治療室で管理されている重症ショック患者において、血液中のアンギオテンシン関連ホルモンの動向を血液、尿を用いて測定している。検体数がいまだ不十分であり、データの解析までは至っていないが、これらショック時にはホルモン値が上昇する傾向にあり、ショック患者の病態変化と深く関与している可能性が示唆されているため、今後とも研究を継続したい。とくに、当大学第一内科により発見されたBang-21という新しいアンギオテンシン関連ホルモンの動向に関する情報は皆無であり、我々の研究が世界初となる点で重要な研究になると期待している。
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