研究課題/領域番号 |
24592347
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大脇 哲洋 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, その他 (50322318)
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研究分担者 |
根路銘 安仁 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, その他 (00457657)
奥村 浩 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (10398282)
上野 真一 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, その他 (40322317)
夏越 祥次 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70237577)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抗酸化力 / 手術侵襲 / 活性酸素 / 外科 |
研究概要 |
肝切除、胃切除、食道切除症例において、その手術侵襲を反映すると考えられる化学反応である、酸化ストレスを測定するd-ROM test (reactive oxygen metabolites test)と、還元である抗酸化力を測定するBAP test(biological anti-oxident potential test)を測定している。 現時点で、胃切除における内視鏡手術症例14例、開腹手術症例10例の比較検討において、術直後は開腹症例が有意に抗酸化力(BAP)が低下し、酸化ストレス(BAP/d-ROM)は、開腹症例で有意に高いことが証明できた。これは、IL-6の変化と強い相関があり、手術侵襲評価として、d-ROM test及びBAP testが有用であり、小さな変化を評価できる可能性が高いことを示している。 肝切除、食道切除症例についても、同様の検討を行うため、症例を蓄積している。特に肝切除における術式別の酸化ストレスの評価については、グルタチオンペルオキシダーゼの定量化とともに評価することで、一定の結果を得られている。 しかしながら、体内水分量の測定においては、データのばらつきが大きく、何かほかの因子(たとえば体重あたりの輸液量など)で補正する方法が必要かもしれない。検討を重ねているところである。 これまでに、色々な臓器の癌切除術における血中酸化反応の測定を行ってきたが、測定値の重要な変化は、術直後、術翌日、3日目の測定結果から判断して、術直後にあることが判った。今後は測定を絞り込んで検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食道癌切除症例は、プロトコールの変更により、一時症例が少なく、サンプル確保が困難であったため、遅れが生じているが、今後はこれまで通りの症例が集まることが予想され、検討可能なサンプル数は得られると思われる。 肝臓がんに対する肝切除症例における術式別侵襲評価については、比較的症例の蓄積が順調であり、早期結果解析が可能と思われる。 手術以外の加療に関しては、消化器外科全体として、術前加療のプロトコールが多く存在し、一定した加療→手術の症例群を集積することが難しい状況となっている。よく吟味した上での症例選択が必要である。 胃癌に対する、内視鏡手術症例の蓄積は順調に進んでいる。早い段階での結果が出せそうである。 体内水分代謝の検討は、データが予想と異なり、未だに安定したものがまだ得られていない。測定法には問題がないが、輸液などの他の因子の影響が大きいものと推察される。輸液を計算式に加えた評価法の確立が必要かもしれない。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の結果から、治療前・治療後の測定ポイントが2~3カ所に絞れる。 ①高侵襲手術症例への応用(J Nutrition, 131: 3208, 2001. Surgery. 137:48-55, 2005)については、食道癌切除患者への術前投与の有用性について、手術侵襲評価をd-ROMs/BAP、細胞内/外液量で可能かどうかを検証する。食道癌患者10例程度を考えている。 ②内視鏡手術の低侵襲性の評価(前年度の症例に加えて胃切除,食道切除の評価を行う。)については、内視鏡下胃全摘術と開腹下胃全摘術の比較について、さらに症例を蓄積する。内視鏡補助下食道切除と開腹・開胸下食道切除については、症例を更に蓄積する。内視鏡下結腸切除と開腹下結腸切除の比較においては、20例程度の測定が可能ではないかと推察する。肝臓がんにおける肝切除においても、内視鏡切除、葉切除の侵襲度比較を行う。 ③放射線化学療法症例の侵襲評価(Tumori. 94:278-83, 2008)については、食道癌治療症例での経時的変化(前、1・2・4週間目)の症例を蓄積する。ただし、プロトコールの変更により、症例が少ない場合は再考する必要がある。 ④上記①‐③の結果により、d-ROMs/BAPによる活性酸素測定が、手術侵襲や放射線治療の生体への影響の指標となることを総合的に評価する。加えて、細胞内/外水分量の測定が、侵襲程度の評価および術後水分管理の一助となることを立証する。細胞内/外水分量、除脂肪体重の測定は、高度侵襲手術患者において継続測定。これまでに得られた新知見について、国内学会、国際学会で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度(平成26年度)は最終年度となる。放射線化学療法や、術前化学療法の侵襲評価には、症例の蓄積が平成26年度にも必要と思われる。肝臓切除症例の術式別侵襲度評価にも、もう少し症例の蓄積が必要と思われる。また、こうした術前の加療は、試行期間がさまざまであり、測定ポイントの決定は難しいことが予想される。各コースの開始前、1週間後、投与後など、ポイントの把握が急がれる。 これまでの3年間の症例の評価を行い、各種の臓器の癌切除手術において、内視鏡手術がどういう点で侵襲が少ないと判断されるか、またはそうでないかを明らかにする。 放射線化学療法や、化学療法が、生体に及ぼす酸化ストレスについても、まとめていく。 こうして、それまでに得られた結果を国内学会、国際学会で発表する。英文論文としても、発表していく。このような、酸化還元力から見た侵襲の定量化は、各種の抗酸化剤や、侵襲低減処置の評価に応用できることが考えられる。今後の展開として、この研究をさらに発展させ、 ①プロバイオティクス製剤の効果、②ビタミンK、ビタミンCなどの抗酸化剤の効果判定、③ステロイド製剤の抗酸化効果の評価、④早期経腸栄養の効果、などについて研究していくためのデータを蓄積する。
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