研究課題
酸化ストレスは、活性酸素種の過剰発生や、抗酸化能力の低下により、生体が酸化に傾いた状態であり、侵襲の大きい手術においては、脂質、タンパク質、酵素、DNA等が酸化され、細胞や組織が障害され、酸化ストレスが亢進していると考えられる。酸化ストレスの評価の一つが、酸化ストレス値(d-ROMs : Reactive Oxygen Metabolites derived compounds )、抗酸化力値(BAP : Biological Antioxidant Potential)であり、この測定により侵襲の定量化が図れる可能性がある。甲状腺切除、結腸切除(腹腔鏡手術)、胃切除(腹腔鏡手術)、肝中央2区域切除、膵頭十二指腸切除、食道癌切除(抜去術、開胸・開腹手術)の術直後のd-ROMs/BAP比の測定では、比較的侵襲が大きいと推察される、開胸・開腹による食道癌切除、開腹による胃癌切除、膵頭十二指腸切除、肝中央2区域切除で高かった。特に食道切除において、手術直後にはd-ROM、BAP両方ともに減少し、特にd-ROM値は、術直後に有意に減少した後、術後1日目には有意に回復し、術後3日目には前値まで回復した(有意差有り)。食道癌患者における、術式別、術前加療別の検討では、手術侵襲を表す手術時間および出血量と術直後・術後1/3/7日目のBAP、d-ROMsは非常に良く相関(Pearsonの相関係数)しており、手術侵襲の評価指標の一つとして応用できることが確認された。鏡視下での食道切除術と、開胸開腹による食道切除術との間での酸化ストレスの差は見られなかった。また、食道癌術前化学放射線治療(CRT)により、術前未治療患者と比較して、抗酸化力が低下していることがd-ROMsおよびBAPの測定により確認できた。CRTの影響についても評価可能であることが示唆された。
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