研究課題/領域番号 |
24592355
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
森 隆 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00336786)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神経障害性疼痛 / インビボパッチクランプ法 / 抗うつ薬 / 抗痙攣薬 / 予防効果 |
研究概要 |
本研究は、神経障害性疼痛の予防に有効な薬物治療法を具体化していくことを目標とし、疼痛緩和治療に用いられる抗うつ薬および抗痙攣薬等の薬物による予防効果とそのメカニズムを、電気生理学的実験と行動実験とを用いて調べることである。今年度は、神経障害性疼痛モデルラットにおける脊髄内での痛覚伝導系神経活動の変化を調べるため、脊髄後角神経細胞のシナプス活動をin vivoパッチクランプ法を用いて解析することに取り掛かった。Sprague-Dawleyラット(4-7週齢)を用い、セボフルラン麻酔下に第5腰神経(L5)を5-0絹糸で結紮し、神経障害性疼痛モデルを作成した。神経結紮2週後、機械的アロディニアをvon Freyフィラメントを用いて確認した後、ウレタン麻酔下にL5レベルの脊髄後角第一層の神経細胞にin vivoパッチクランプを行った。通常のホールセル記録による興奮性シナプス電流(EPSCs)と抑制性シナプス電流(IPSCs)、機械的刺激によるEPSCsとIPSCsの反応を、神経結紮をしないsham手術を行ったラット(コントロール群)と比較した。機械的刺激に対するEPSCsの反応および活動電位の発生頻度増加の程度が、コントロール群より神経障害性疼痛モデル群で多い傾向を認めているが、現時点での検討数では統計学的有意差は認めていない。この差を調べることは、神経障害性疼痛の治療法および予防法を検討するためには重要な意義を持つ。本研究を進める中で、デクスメデトミジン、トラマドールなどの薬剤に脊髄後角神経細胞シナプス活動に対する作用が認められた。このように本実験手技を用いて薬剤の脊髄痛覚伝導系への作用を見出すことも、神経障害性疼痛の予防効果を検討するうえで重要である。次年度は行動実験も並行して行うため、神経結紮後のアロディニア評価、薬剤投与方法について、いくつかの薬剤を用い予備実験に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は、当初、perforatedパッチクランプ法を行い神経障害性疼痛モデルでの脊髄後角第一層神経細胞のEPSCs、IPSCs、そして膜内外の陰イオン勾配の変化を記録する予定であった。しかし、その実験の前段階として、IPSCsとEPSCsの観察に有利な通常のホールセルパッチクランプ法により、神経障害性疼痛モデルにおける脊髄痛覚伝導系神経細胞のシナプス活動や機械的刺激に対する反応がどのような変化を起こしているかを調べることが重要かつ必要と考え、その評価を優先した。さらに次年度、電気生理学的実験と行動実験を並行して行うことで研究を効率的に進めることを目標に、平成25年度に予定している行動実験の準備および予備実験にも時間を費やしたため、平成24年度に予定していた実験が遅れることになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、行動実験と電気生理学的実験を並行して行うことで、効率的に研究を進められるように実験スケジュールを組む予定である。平成24年度に着手した脊髄痛覚伝導系神経細胞のシナプス活動や反応の変化については、記録細胞数を増やしていくことにより解析可能と考えられる。平成24年度に予定していた、神経障害性疼痛の機序の1つと考えられている脊髄後角第一層神経細胞の陰イオン濃度勾配変化について、in vivoパッチクランプ法を用いて、今後明らかにする。陰イオン濃度勾配は、gramicidin Dを用いて穿孔パッチクランプ法を行い、細胞内環境および細胞内陰イオンを保持した状態でIPSCsを記録することで計測可能と考えられる。神経障害性疼痛モデルとsham手術を行ったコントロールのとの差を見出す。予備行動実験で、ダイナミックプランター・エステシオメータ 37450(Ugo Basile社製)を用いてL5神経結紮1‐2週後の機械的アロディニアの評価、埋め込み型浸透圧ポンプの腹腔内留置により2週間持続的に一定量の薬剤投与が可能であることを確認した。それらを用いて、平成25年度に計画しているさまざま薬剤の予防効果を効率的に調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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