研究課題/領域番号 |
24592356
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
木口 倫一 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90433341)
|
研究分担者 |
小林 悠佳 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20511562)
岸岡 史郎 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60137255)
深澤 洋滋 関西医療大学, 保健医療学部, 准教授 (70336882)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ヒストン / エピジェネティクス / 神経障害性疼痛 / マクロファージ / ケモカイン / サイトカイン / CCL3 / フェノタイプ |
研究実績の概要 |
複雑かつ難治性の慢性疼痛は、疼痛伝達経路における慢性神経炎症が重要な分子基盤であると理解され始めている。本研究は特に核タンパク質であるヒストンを介した慢性疼痛の末梢性分子基盤を明らかにするために遂行された。 マウスの坐骨神経に部分結紮傷害を施すと、慢性疼痛の責任分子であるサイトカイン(IL-1β、TNF-αなど)やケモカイン(CCL2、CCL3、CCL8など)を含む種々の炎症性分子が発現増加し、その大部分は血中より浸潤したマクロファージにより供給されることを各種解析により見出した。またそれらの発現は、各々のプロモーター領域におけるヒストンH3のエピジェネティクス修飾(アセチル化、メチル化)に基づいて誘導されることも生化学的・組織化学的解析により明らかにした。これらのエピジェネティクス修飾変化が生じたマクロファージは主に、神経炎症の慢性化と密接に関与する炎症性(M1)フェノタイプへと転化していることが伺えた。 in vivoならびにin vitroの実験系においてM1マクロファージにサイトカインIL-4を処置すると、炎症性因子の発現低下と共に、抑制性(M2)フェノタイプへの転化が観察された。また同時に、神経傷害後に生じる痛覚過敏やアロディニアもIL-4投与により改善された。マクロファージの欠損モデルを用いた実験においても、これらの疼痛行動が抑制されたことより、ヒストン修飾変化を伴ったM1マクロファージの重要性が示された。 本研究の結論として、傷害末梢神経に浸潤するマクロファージではヒストン修飾変化に基づくフェノタイプ変化が生じており、それらが産生する炎症性因子が慢性疼痛の病態基盤を担うことを明らかにした。さらにこれらの阻害薬を用いた薬理学的アプローチが、慢性疼痛の新規治療法の確立に繋がる可能性も示唆している。
|