研究課題/領域番号 |
24592358
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
下山 恵美 帝京大学, 医学部, 教授 (10206253)
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研究分担者 |
下山 直人 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (40196572)
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キーワード | 化学療法 / 神経障害 / オキサリプラチン / ミトコンドリア障害 |
研究概要 |
我々が作成したオキサリプラチンのマウスにおけるモデルが、マウスにおいて抗癌作用がある適切なモデルであることを確認するために、マウスに大腸癌細胞を接種して発育させ、我々のモデルのプロトコールのオキサリプラチンの投与により、癌腫の発育への影響を検討した。オキサリプラチン15mg/kg投与を週1回、3回繰り返し投与することにより、癌腫の発育を抑制され、我々のモデルの正当性が示された。また、オキサリプラチンにより惹起される神経障害の機序にミトコンドリア障害が関与するという仮説に基づいて、ミトコンドリアに集積し、抗酸化作用を及ぼすとともに、ミトコンドリアの生体エネルギー環境を改善する作用のあるSS-31ペプチドの急性・慢性神経障害に対する効果を検討した。SS-31はオキサリプラチン投与と並行して投与することにより、急性神経障害、慢性神経障害の療法を予防することが可能であった。また、慢性神経障害でみられた足底皮膚における表皮内神経線維の消失を予防することができた。これに対し、急性神経障害、慢性神経障害が確立した後は、急性神経障害は症状を緩和したが、慢性神経障害には効果を及ぼさなかった。急性神経障害により脊髄後角細胞におけるc-Fosの発現もSS-31投与で抑制することができた。以上より、慢性神経障害は、神経細胞のミトコンドリアの活性酸素種の増加や生体エネルギー障害が関与し、これらを改善することにより予防できることが示された。これに対して、急性神経障害はその症状発現自体に活性酸素種が関与していることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オキサリプラチンのモデルの正当性を検証した上で、ミトコンドリア障害との関連性を検討できた。
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今後の研究の推進方策 |
オキサリプラチンの慢性神経障害の機序をさらに検討するため、神経細胞のミトコンドリアに対するオキサリプラチンの効果をin vivoおよびin vitroで検討する。 また、動物モデルを用いて慢性神経障害性痛に対して、疼痛緩和薬の開発を目的として、臨床で現在神経障害性疼痛に対して使用されている鎮痛薬、鎮痛補助薬など諸薬剤の効果をスクリーニングする。検討する薬剤はプレギャバリン、カルバマゼピン、クロナゼパム、メキシレチン、アミトリプチリン、デュロキセチン、ミルタザピン、トラマドール、モルヒネなどとする。 さらに、慢性神経障害の予防薬としてSS-31を開発して行くに当たり、オキサリプラチンの抗癌作用に影響を及ぼさないことの確認が必要であり、大腸癌細胞と大腸癌モデルを用いて、n vitroおよびin vivoで検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
オキサリプラチン神経障害モデルを用いた鎮痛薬・鎮痛補助薬の効果の検討が今年度開始とならなかったため、そのための試薬、実験動物の購入は次年度になる。 実験動物、試薬の購入に使用する。
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