研究課題/領域番号 |
24592361
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
小竹 良文 東邦大学, 医学部, 教授 (70195733)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | スペクトロメトリー / 酸素需給バランス / 循環動態モニタ |
研究概要 |
平成24年度は該当年度研究計画の②「日本光電製4波長パルスヘモグロビンメーターを改造し、静脈血酸素飽和度を推定するアルゴリズムを確立する」を実施した。具体的には麻酔中の患者に日本光電製4波長パルスヘモグロビンメーターを装着し、各波長の吸光度を連続的に測定し、ヘモグロビン濃度および混合静脈血酸素飽和度との関係を評価した。この結果に関しては”Evaluation of multiwave pulse total-hemoglobinometer during general anesthesia.”と題する論文にまとめ、現在査読のある英文学術誌に投稿中である。また、該当年度研究計画の①の第一段階として適切な脈波信号の収集部位を検討するため、前額部と手指部における脈波信号の比較を行った。この研究結果は” Difference of plethysmographic waveform characteristics between finger sensor and forehead sensor of pulse oximeter.”と題する論文にまとめ、現在査読のある英文学術誌に投稿中である。なお、平成24年度経費で消耗品費として計上した予算に関しては、4波長パルスヘモグロビンメーターの改造に消耗品の購入が必要なかったことから後年度へ繰り越すこととした。一方、平成25年度に予定していた経食道エコー装置を用いた研究計画の早期実施が妥当と判断し、該当する予算を前倒して請求し、経食道エコープローブを購入した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度である平成24年度に関しては,研究実績の概要において記述したように2編の英文論文にまとめ投稿した。さらに多波長パルスオキシメーターに関する検討が概ね終了したことを受けて、平成25年度以降に開始する予定であった低リスク患者における検討を早期に開始することが可能な状況にあり、これらの点から研究は順調に進展していると評価している。一方、当初計画した改造した多波長パルスオキシメーターによる静脈血酸素飽和度の非侵襲的推定は研究協力者である日本光電株式会社の臼田氏、小林氏を交えて検討した結果、現在の技術では克服しえない課題が多く残されており、異なるアプローチを取ることが望ましい、との結論に達した。この点を含めて最終的な達成度として「概ね順調に進展」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
前述したように平成24年度に実施した研究結果からはパルスオキシメーターの脈波信号から静脈血酸素飽和度を臨床的に要求される精度をもって非侵襲的に推定することは、現在の技術では困難であることが明らかになった。このため当初の計画に対して以下の2点を変更し、今後の研究を推進することとした。第一点は全身の酸素需給バランスを評価する手段としての静脈血酸素飽和度の非侵襲的推定に関して近赤外線スペクトロスコピー(near infrared spectroscopy, NIRS)に焦点をあて今後の研究を推進する点である。第二点としてはNIRSをもってしても静脈血酸素飽和度の正確な評価が困難であった場合の代替手段として研究の主たるテーマを酸素需給バランスから酸素供給を重視したものとし、臨床的に意義のある研究成果が得られるよう若干修正する点である。全身レベルでの酸素供給は心拍出量、動脈血酸素飽和度および動脈血中ヘモグロビン濃度で評価することが可能であり、研究の推進には支障ない。さらに平成25年度以降の研究計画に臓器別の酸素供給の非侵襲的評価を加えて臨床的意義を高めるための方策としたい。具体的には消化管、肝臓および腎臓への酸素供給を非侵襲的に評価することで周術期における各臓器の機能維持、臓器障害の予防手段となり得るかどうかを検証する予定とする。この追加される研究計画では主として入手済みの経食道エコープローブを用いて評価を行うが、肝臓および腎臓への血流評価に当たってはコンベックスプローブが必要となるため、以下に述べるように平成24年度の未使用分および平成25年度消耗品費の一部を同プローブの購入費用に充当する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
申請当時の25年度計画では経食道エコープローブの購入費用を機器備品費として計上していたが、上記の理由により24年度に前倒しで使用した。一方、24年度に計上した消耗品費として計上した多波長パルスオキシメーターの改造にかかわる費用は、この改造が困難であることから使用せず、未使用として25年度以降に繰り越すこととした。この費用は平成25年度に計上した消耗品費と併せて、近赤外線スペクトロスコピー用プローブの購入費用に充当するほか、上述したコンベックスプローブの購入代金および平成24年度および25年度に実施した研究成果発表のための学会参加のための旅費および論文出版にかかわる費用に充てる計画としたい。
|