研究概要 |
敗血症などの全身性炎症症候群に合併する頻脈性不整脈の発生機序を明らかにするために大腸菌内毒素であるリポポリサッカライドを用いた敗血症病態モデルを用いて検討を行った。その結果,心房筋細胞活動電位の短縮が観察され,その原因として,L型電位依存性カルシウムチャネルにおいて,チャネル電流の抑制およびチャネルそのものの発現抑制が起きることを確認した。さらに,再分極を誘導する遅延整流型カリウムチャネル電流の増大を観察したが,チャネル発現についてのウェスタンブロットにおいては発現増大が認められたが,RT-PCRにおいては有意な変化は認められなかった。一方で,マイクロRNA (miRNA)と呼ばれる細胞内に存在する長さ25塩基ほどの一本鎖RNAが,敗血症病態を含む全身性炎症反応症候群の病態においてこれらイオンチャネルの発現を調節する機能を持つことが明らかになってきた。それはmiRNAの前駆物質pre-miRNAが核内で生成され、細胞質内へ運ばれた後,dicerと呼ばれる物質により切り取られ最終的に単鎖のmiRNAが合成されることによるが,miRNAは様々な細胞内カスケードに関与していることが知られるようになり,細胞外よりdecoy RNAを投与するとその機能を抑制できる可能性が示唆された。さらにごく最近,心筋のmiRNAは主として6種(1, let-7, 133, 126–3p, 30cおよび26a)に絞られることが知られているが,これ以外のmiRNAについても,炎症病態におけるチャネル発現に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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