全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome: SIRS)は,外科手術,外傷,熱傷,虚血再灌流などの侵襲的な病態において発生し,敗血症は,このSIRSに最近やウィルスの感染が合併した病態と定義される。SIRSや敗血症は,全身において炎症性サイトカインや炎症性の分子を放出することで,肺,心臓,腎臓など全身の臓器において炎症性の反応を惹起し,特に,肺胞上皮細胞,心房筋細胞,血管内皮細胞,腎臓のpodcyteなどに影響を及ぼし,多臓器不全を引き起こす可能性が高いことが明らかとなってきた。この炎症反応はこれら細胞の細胞膜上に炎症性の受容体が浮かび上がることにより,炎症性サイトカインを感知し,いわゆる「アラート」を発することにより,炎症を制御していると考えられ,炎症性サイトカインの産生および,細胞内・細胞間の信号伝達経路としてのmiRNAの役割が示唆された。また,吸入麻酔薬であるセボフルランやイソフルランは,炎症を抑制する作用が考えられ,炎症性サイトカインの産生を抑制するものと思われるが,miRNAについても,炎症性サイトカインの発現に関して影響を及ぼしている可能性が示唆された。他の静脈麻酔薬や局所麻酔薬について明らかな炎症反応抑制効果については認められていないが,これらの麻酔薬が,炎症制御についてこれからの創薬のターゲットとなる可能性が示唆された。
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