本研究においては、下行性疼痛抑制機構における脳内 GPR40/FFA1 シグナルの関与について検討を行った。疼痛評価には、ホルマリン試験を用いた。GPR40/FFA1 アゴニストGW9508 (1 μg) はホルマリン試験の 10 分前に脳室内投与した。GPR40/FFA1 アンタゴニスト GW1100 (10 μg)、α2アドレナリン受容体拮抗薬のヨヒンビン (4 μg) およびセロトニン (5-HT) 1A受容体拮抗薬の WAY100935 (10 μg) は GW9508 投与の 10 分前に脳室内または脊髄腔内投与した。Dopamine beta hydroxylase (DBH、ノルアドレナリン作動性神経マーカー) および triptophan hydroxylase (TPH、5-HT 作動性神経マーカー) と GPR40/FFA1 または c-fos 蛋白質との共局在解析には、蛍光二重免疫染色法を用いた。ノルアドレナリン(NA)および 5-HT は LC-MS/MS にて測定した。GPR40/FFA1 は青斑核および大縫線核領域で DBH および TPH と共局在を示した。GW9508 の脳室内投与により、ホルマリン誘発疼痛行動が抑制され、この抑制はヨヒンビンやWAY100635 の脊髄腔内への前処置により抑制された。また、青斑核および大縫線核領域で c-fos 陽性タンパク質の発現増加が認められ、この増加は DBH および TPH 陽性細胞上で認められた。脊髄中の NA および 5-HT 量は GW9508 の投与によっていずれも増加した。GW1100の処置により、ホルマリン誘発疼痛行動は有意に増強した。 以上、本研究においてGPR40/FFA1 は、下行性疼痛抑制機構に関与する神経上に発現しており、これらのシグナルは疼痛制御に関与していることが示唆された。
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