研究概要 |
【代用血漿製剤がヒアルロン酸ゲル構造に及ぼす影響】 分子量の異なる2%ヒドロキシエチルデンプン製剤(HES 70, HES 130, HES 200)が、高分子ゲル構造変化に及ぼす影響を検討した。1%ヒアルロン酸ゲル0.1 gを用い、ゲル上にブルーデキストランを含んだ2%ヒドロキシエチルデンプン製剤を10 mL/hの速度で3時間灌流した(n = 5)。ヒアルロン酸ゲルが崩壊するとゲル孔が大きくなるため、ブルーデキストランはゲル内に徐々に浸透する。ブルーデキストランが浸透したゲル内の箇所は青く染まるため、青く染まっていない部分の面積を測定することにより、ゲルの残存度を経時的に測定することができる。<結果>いずれのヒドロキシエチルデンプン製剤においても、ゲルの残存度は経時的に減少した。しかし、その程度はヒドロキシエチルデンプンの分子量に依存し、1および2時間後ではHES 200 > HES 70, HES 130であった(P < 0.001)。2時間後ではHES 130 > HES 70(P < 0.001), 3時間後ではHES 130,HES 200 > HES 70(P < 0.001)であった。<考察>ヒドロキシエチルデンプンの分子量が大きいほどヒアルロン酸ゲルの崩壊が進行したことは、ヒドロキシエチルデンプン分子がヒアルロン酸ゲルの網目に浸透することによりヒアルロン酸ゲルの構造を弱めたことを示唆する。同様の現象が血管内皮細胞のglycocalyxにおいても生じる可能性があり、ヒドロキシエチルデンプンがゲル構造におよぼす影響はヒドロキシエチルデンプンの血漿増量効果を規定する重要な因子と考えられる。
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