神経障害性疼痛に対する新たな鎮痛薬開発に貢献することを目的として、内因性カンナビノイドの疼痛抑制機序全貌を分子レベルで解明するための研究計画を立てた。①電気生理学的手法(アフリカツメガエル卵母細胞発現系による再構築系実験と神経細胞を用いた実験)による疼痛機序に関与する受容体・イオンチャネルに対する内因性カンナビノイドの影響解析、②神経障害性疼痛のモデルマウスに対する内因性カンナビノイドの疼痛抑制効果の解析、③ノックアウトマウス・神経障害性疼痛モデルマウスに対する内因性カンナビノイドの疼痛抑制効果の解析、である。 我々は、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いた電気生理学的実験により、内因性カンナビノイドであるアナンダマイドが、疼痛発現機序への関与が示唆されている電位依存性ナトリウムチャネル(Nav)サブユニット、Nav1.2、Nav1.6、Nav1.7、Nav1.8の機能を抑制することを発見し、これらの実験結果を論文としてまとめ、米国麻酔科学誌、Anesthesia and Analgesiaに掲載された(Anesth Analg 2014;118:554-62)。さらに、成人の正常な状態ではほとんど発現の見られないNav1.3が、神経障害性疼痛の状態では脊髄後根神経節において、その発現量が増加することが示され、Nav1.3と神経障害性疼痛との関わりが注目されている。そこで我々は、Nav1.3に対するアナンダマイドの影響解析を行った。その結果、アナンダマイドはNav1.3に対してはほとんど影響を及ぼさないことが確認された。一方、TRP受容体のサブタイプの一つであるTRPA1は、神経障害性疼痛の代表的な症状の一つ、冷感アロディニアを形成するメカニズムに含まれることが示唆されているが、我々は、アナンダマイドがTRPA1受容体機能を増強させることを確認した。
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