敗血症性ショックは周術期を含め、集中治療領域において致死的な病態であり、有効な治療戦略が求められながらも、なお決定的な標準治療法が確立されていない。過去、大量輸液療法や循環作動薬による循環動態のサポート、人工呼吸器を用いたオープンラングストラテジー等による肺保護戦略の有効性が検討されてきた。しかしながら、敗血症性ショックは、重症細菌感染と全身性の炎症が混在した病態であり、細菌感染の制御と炎症反応の制御を行う必要がある。LPSを用いた全身性炎症反応モデルの研究では、炎症性サイトカインの制御により生存率の改善が認められ、多数の薬剤が研究対象となってきた。しかし、実際の敗血症では炎症反応が惹起された後に介入し、効力を発揮することが求められるという現実がある。そこでLPSにより炎症反応を惹起した後に、吸入麻酔薬を投与したところ、生存率を改善させることに成功した。作用機序を検討したところ、吸入麻酔薬が生体内で一酸化炭素を誘導し、HMGB1の分泌を抑制していることが確認できた。
|