研究課題
基盤研究(C)
core 2 N-acetylglucosaminyltransferase (C2GnT)は糖転移酵素の一つであり、C2GnTが発現する前立腺癌、膀胱癌は悪性度が高いことが報告されている。申請者は、BCG生菌を破壊しナノメートルサイズの菌体成分としたナノパーティクルBCGを用いて検討し、C2GnTを発現する細胞(KK47C2GnT細胞)ではBCG生菌は効果がなく、一方ナノパーティクルBCGは有効であることを明らかにした。本研究では、C2GnT発現と糖鎖構造変化の解析によるBCG抵抗性膀胱癌判定法の開発と、ナノパーティクルBCGの生菌無効例への治療薬としての開発を目的とする。現在臨床的に問題となっているのはBCG failureである。そのメカニズムを探るため、BCG抵抗性膀胱癌細胞株の作出を行った。5637細胞、T24細胞と日本株BCG生菌との混合培養を継続して行い、5637細胞は約20代後に、T24細胞は約40代後にBCG生菌による生細胞数低下効果がなくなり耐性化した。耐性株ではBCG生菌の細胞への接着率が有意に低下した。また、耐性化後一旦BCG生菌を除いて培養後再びBCG生菌を添加したが、耐性能は維持されていた。以上から、BCG生菌が腫瘍細胞と接触出来なくなることがBCG failureの一因として示唆された。また、一旦獲得された耐性能は失われず、この点がBCG failureの原因となることが示唆された。臨床検体では、抗C2GnTモノクローナル抗体を用いてTUR-Bt標本に対して数十例の免疫染色を行った。現段階では染色性とBCG生菌の効果との相関性を明らかにするには至っていない。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究により、KK47C2GnT細胞の他に、BCG failureの状態を再現したin vitroの系を作出することができた。現在試料を調製中であるが、次年度からC2GnT発現や、Sweet Blotを用いた実際の糖鎖構造解析に着手することが可能となった。また、臨床検体のC2GnT発現検討も着手しており、今後症例を増やしさまざまな観点からデータ解析することで相関性を明らかにすることが可能であると考えている。
1、C2GnT等発現と糖鎖構造変化の解析による BCG 抵抗性マーカーの同定:得られた耐性株を用いてC2GnTを中心としてその分子機構を探るとともに、糖鎖構造解析を行い、BCG抵抗性マーカーを同定する。また、TUR-Bt標本や患者血清、尿を用いた糖鎖構造解析も行う。2、ナノパーティクルBCGからの精製品の効果検討と相関性検証:これらの耐性株に対してナノパーティクルBCGが有効なのか、交替療法を念頭に入れてコンノート株が有効なのか検討する。さらにPIM等ナノパーティクルBCGからの精製品による効果検討を行い、C2GnT発現や糖鎖構造との相関性を検証する。3、ナノパーティクル BCG の生菌無効例への治療薬としての開発:以上から得られた知見を元に、動物モデルを用いて最も有効な成分を中心として投与し、効果及び安全性を検証する。BCG failureの個別化医療を念頭に、患者全血を用いた全血アッセイ系により、BCG 生菌無効例での有効成分を事前に選択して投与する個別化を目指す。C2GnT 等の発現解析と糖鎖構造解析も行い、相関性を解析する。
該当なし
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