研究課題
core 2 N-acetylglucosaminyltransferase (C2GnT)は糖転移酵素の一つであり、C2GnTが発現する前立腺癌、膀胱癌は悪性度が高いことが報告されている。申請者は、BCG生菌を破壊しナノメートルサイズの菌体成分としたナノパーティクルBCGを用いて検討し、C2GnTを発現する細胞(KK47C2GnT細胞)ではBCG生菌は効果がなく、一方ナノパーティクルBCGは有効であることを明らかにした。本研究では、C2GnT発現と糖鎖構造変化の解析によるBCG抵抗性膀胱癌判定法の開発と、ナノパーティクルBCGの生菌無効例への治療薬としての開発を目的とする。現在臨床的に問題となっているのはBCG failureである。そのメカニズムを探るため、初年度にBCG抵抗性膀胱癌細胞株の作出を行った。その検討から、BCG生菌が腫瘍細胞と接触出来なくなり、さらに一旦獲得された耐性能は失われず、このことがBCG failureの一因として示唆された。この日本株BCGにより作出した耐性株に対して、コンノート株の効果を検討したところ、コンノート株は有効であることが示され、臨床的に交替療法の有用性が示唆された。また、同様にナノパーティクルBCGも有効であり、BCG failureに対する有用性が示唆された。現在、コンノート株を用いて耐性株を作出中である。臨床検体では、抗C2GnTモノクローナル抗体を用いたTUR-Bt標本に対する数十例の免疫染色を引き続き行ったが、現段階では染色性とBCG生菌の効果との相関性を明らかにするには至っていない。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究により、BCG failureの状態を再現したin vitroの系を作出し、ナノパーティクルBCGが有効であることを示すことができた。現在試料を調製中であるが、次年度からナノパーティクルBCGが腫瘍細胞に与える変化を含めてC2GnT発現や、Sweet Blotを用いた実際の糖鎖構造解析に着手することが可能となった。また、臨床検体のC2GnT発現検討も着手しており、今後症例を増やし特に臨床データについても詳細な検討を加えて、さまざまな観点からデータ解析することで相関性を明らかにすることが可能であると考えている。
1、C2GnT等発現と糖鎖構造変化の解析による BCG 抵抗性マーカーの同定:得られた耐性株を用いて、ナノパーティクルBCGが腫瘍細胞に与える変化を含めて、C2GnTを中心とした分子機構を探るとともに、糖鎖構造解析を行い、BCG抵抗性マーカーを同定する。また、TUR-Bt標本や患者血清、尿を用いた糖鎖構造解析も行う。2、ナノパーティクルBCGからの精製品の効果検討と相関性検証:コンノート株耐性株に対する日本株BCGの効果、ナノパーティクルBCGの効果を検討するとともに日本株耐性株との効果比較を行う。さらに両耐性株に対してPIM等ナノパーティクルBCGからの精製品による効果検討を行い、C2GnT発現や糖鎖構造との相関性を検証する。3、ナノパーティクル BCG の生菌無効例への治療薬としての開発:in vitroの系にPBMCを用いた系を導入し、効果を検討する。以上から得られた知見を元に、動物モデルを用いて最も有効な成分を中心として投与し、効果及び安全性を検証する。BCG failureの個別化医療を念頭に、患者全血を用いた全血アッセイ系により、BCG 生菌無効例での有効成分を事前に選択して投与する個別化を目指す。C2GnT 等の発現解析と糖鎖構造解析も行い、相関性を解析する。
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10.1016/j.transproceed.2013.09.036.
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