研究課題/領域番号 |
24592372
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
盛 和行 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40266903)
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研究分担者 |
大山 力 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80282135)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | BCG / ナノパーティクルBCG / 糖鎖構造解析 / 膀胱癌 |
研究実績の概要 |
core 2 N-acetylglucosaminyltransferase (C2GnT)は糖転移酵素の一つであり、C2GnTが発現する前立腺癌、膀胱癌は悪性度が高いことが報告されている。申請者は、BCG生菌を破壊しナノメートルサイズの菌体成分としたナノパーティクルBCGを用いて検討し、C2GnTを発現する細胞(KK47C2GnT細胞)ではBCG生菌は効果がなく、一方ナノパーティクルBCGは有効であることを明らかにした。本研究では、C2GnT発現と糖鎖構造変化の解析によるBCG抵抗性膀胱癌判定法の開発と、ナノパーティクルBCGの生菌無効例への治療薬としての開発を目的とする。 現在臨床的に問題となっているのはBCG failureである。そのメカニズムを探るため、日本株およびコンノート株それぞれにBCG抵抗性膀胱癌細胞株の作出を行った。T24細胞ではコンノート株に耐性化すると日本株も無効となることが明らかとなり、日本株は1st lineとして利用した方がいいと示唆された。現時点でもコンノート株の国内供給は再開されていないが、交替療法のevidenceとして重要な知見と思われた。 さらに両株に耐性のdouble耐性株も作出中である。現時点で日本株→コンノート株の順に耐性化させた5637細胞では、ナノパーティクルBCGが有効であることが示された。BCG failure後の交替療法もfailureした場合でも、ナノパーティクルBCGが有効である可能性が示唆された。 臨床検体では、抗C2GnTモノクローナル抗体を用いてTUR-Bt標本に対して数十例の免疫染色を行った。現段階では染色性とBCG生菌の効果との相関性を明らかにするには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究により、BCG failureの状態を再現したin vitroの系を日本株、コンノート株、さらに両株で作出することができた。BCG交替療法の無効後にもナノパーティクルBCGの有効性を示すことができた。これらを用いて、C2GnT発現や、Sweet Blotを用いた実際の糖鎖構造解析を行う体制を整えることができた。また、臨床検体のC2GnT発現検討も着手しているが、当院ではBCG failureの症例が少ないこともあり、今後関連施設等より広く症例を集積する予定である。臨床データの詳細な検討を加え、さまざまな観点からデータ解析することで相関性を明らかにすることが可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1、C2GnT等発現と糖鎖構造変化の解析による BCG 抵抗性マーカーの同定:得られた耐性株を用いてC2GnTを中心としてその分子機構を探るとともに、糖鎖構造解析を行い、BCG抵抗性マーカーを同定する。また、TUR-Bt標本や患者血清、尿を用いた糖鎖構造解析も行う。 2、ナノパーティクル BCG の生菌無効例への治療薬としての開発:double耐性株の系にPBMCを用いた系を導入し効果を検討する。BCG failureの個別化医療を念頭に、患者全血を用いた全血アッセイ系により、BCG生菌無効例での有効成分を事前に選択して投与する個別化を目指す。C2GnT 等の発現解析と糖鎖構造解析も行い、相関性を解析する。 3、研究総括およびナノパーティクルBCGと精製品製造の模索:研究を総括するとともに、ナノパーティクルBCGおよびPIM等の精製品の有効性が示されたことから、今後の安定供給、さらに製薬化へのステップを目指して共同研究者を模索する予定である。
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