研究課題/領域番号 |
24592373
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
土谷 順彦 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70282176)
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研究分担者 |
羽渕 友則 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00293861)
成田 伸太郎 秋田大学, 医学部, 講師 (40396552)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 骨転移 / 予後 / 遺伝子多型 / SNPアレイ |
研究概要 |
我々は、癌関連遺伝子SNPアレイを用いて、生存期間に関わる遺伝子の同定を試みた。その結果、14個(6遺伝子;XRCC4, PMS1, GATA3, IL13, CASP8, and IGF1)の生存期間に有意差を有するSNPが同定され、最も関連度の高い6SNPsを用いた予後予測モデルを作成した。これらの遺伝子のSNP解析と従来の臨床病理学的なリスク因子との併用により、より正確な予後予測や個人に合わせた治療法の選択につながる可能性がある。この結果は、Genes & Cancer誌に掲載予定である(Genes & Cancer, first published on March 21, 2013 as doi:10.1177/1947601913481354)。 さらに、我々は候補6遺伝子の中からIGF1の3つのハプロタイプブロックに注目し、IGF1のハプロタイプと転移性前立腺癌の予後に関連があることを示した。その成果は、BMC Cancer誌に掲載された(Tsuchiya N, et al. Insulin-like growth factor-1 genotypes and haplotypes influence the survival of prostate cancer patients with bone metastasis at initial diagnosis. BMC Cancer.13:150,2013)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのSNPアレイ解析から得られた結果をもとに、IGF1遺伝子に関してはさらに詳細なハプロタイプ解析を行い、より精度の高い進行前立腺癌の予後予測のための遺伝子多型マーカーを見出すことができた点で、一定の成果が得られたと考えている。 一方、SNPアレイで同定された6SNPを用いた予後予測モデルの検証に関しては、他施設共同研究(前立腺腫瘍の治療反応と進展予知を目的とした遺伝子多型解析:UMIN trial ID: UMIN000009785)を計画し、検体の収集を進めている。現在、国内外から約100例の検体が集積されており、目標症例数200例の約半数に達したことになる。 今後、これらの症例のDNAを用いてSNP解析を行うとともに、臨床データの収集を行い、予後予測モデルとしての臨床的有用性に関する検証作業に着手する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、多施設共同研究(前立腺腫瘍の治療反応と進展予知を目的とした遺伝子多型解析:UMIN trial ID: UMIN000009785)を計画し検体の収集を進めているが、本年度中に予定症例数の200例の登録を達成させることを目標とする。 一方、現在までに集積された約100例のDNAに関しては、SNPアレイを用いた遺伝子型解析を開始する予定である。また、これらの症例に関する臨床データを各施設から収集し、データベースの整備を行うことを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
i)候補遺伝子多型の機能解析(土谷) 前立腺癌の進展に関与することが確認された候補遺伝子に関して、SNPパネルで得られた情報を元に、遺伝子多型が遺伝子発現または遺伝子・タンパク機能に与える影響を検討する。SNPがプロモーター領域に存在する場合は、SNPを含むプロモーター領域を挿入したレポーター遺伝子を有するベクターを細胞に導入し、レポーター遺伝子の発現を定量化することによって、SNPの遺伝子発現に対する影響を評価する。また、実際に遺伝子型によってタンパクの発現が変化していることを免疫染色法によって組織学的に確認する。また、アミノ酸置換を伴うような、タンパク機能に影響を与えていると予測されるSNPに関しては、異なる遺伝子型をもつ発現ベクターを作製する。このベクターを前立腺癌細胞に遺伝子導入した際の細胞機能の変化を、前述した方法で検討する。 ii)候補遺伝子の機能解析(土谷、成田) これまでに同定された候補遺伝子に関して、前立腺癌細胞(LNCaP, DU145, PC3など)または正常前立腺と前立腺癌における発現をRT-PCRやウエスタンブロット法を用いて確認する。前立腺癌において発現が亢進している遺伝子に関しては、前立腺癌細胞を用いてiRNAを用いた遺伝子のノックダウンを行い、細胞増殖能やアポトーシス、浸潤能・転移能、細胞周期に与える影響などを検討する。前立腺癌において発現が低下している候補遺伝子に関しては発現ベクターを作製し、発現が低下または発現していない前立腺癌細胞に遺伝子導入を行い、同様の細胞実験を行う。細胞実験で、候補遺伝子の生物学的な機能が確認されれば、細胞を移植した際の増殖能や転移能を、ヌードマウスを用いた動物実験で確認する。また、プロモーター領域に存在するSNPに関してはレポータージーンアッセイによるSNPの機能解析を行う。
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