研究課題
我々は、癌関連遺伝子SNPアレイを用いて生存期間に関わるSNPを同定し、進行性前立腺癌治療の個別化を図ることを目的として本研究を行った。骨転移を有する前立腺癌と診断された188例の患者を対象とし、408個の癌関連遺伝子における1421の SNPをタイピングすることによって癌特異的生存期間に関与するSNPをスクリーニングし、その結果、14個(6遺伝子)の生存期間に有意に関連するSNPを同定した(Tsuchiya N, et al., Genes & Cancer, 2013)。これらのSNPの臨床使用を目指し、外部コホートにおける検証を行う目的で126例の症例が登録されており、SNPアレイを用いたジェノタイピングが進行中である観察期間終了時(5年後を予定)には進行性前立腺癌の予後に関与するSNPの検証結果が公表される見込みである。また、進行性前立腺癌の予後に関連が認められたCYP19(aromatase)遺伝子のプロモーター領域に存在する遺伝子多型とCYP19の発現を検討する目的でレポータージーンアッセイを行った。エクソンI.6の上流のrs10459592とrs4775936のハプロタイプが有意にCYP19のプロモーター活性と関連しており、これらのハプロタイプと血中の性ホルモン値の間にも有意な関連が認められた。(Kanda S, et al. Int J Cancer, 2014掲載予定)本研究により、症例対象研究から同定された関連遺伝子が前立腺癌の予後に関与する生物学的意義の一部が明らかにされた。
2: おおむね順調に進展している
1.SNPアレイ解析・予後予測モデルの作成収集したゲノムDNAからSNP アレイを用いて、約400の癌関連遺伝子上の約1,400種類のSNPを解析する。これまでの研究で候補遺伝子として同定された14 SNPsについても解析を行うことを目標としたが、当初予定のSNPアレイが販売中止となったため、さらに解析SNP数を240,000個に増やしたSNPアレイに変更し、ジェノタイピングを行っている。2.癌進展に関わる分子機構の解明・治療標的分子としての発展性進行性前立腺癌の予後に関連が認められたCYP19(aromatase)遺伝子のプロモーター領域に存在するrs10459592とrs4775936のハプロタイプとプロモーター活性との関連、ならびに血中の性ホルモン値との関連を見出し、前立腺癌の予後に関与するSNPの生物学的意義の一部を明らかにした。また、IGF-1に関しては以前の研究で予後との関連が認められた反復多型の他に、予後との関連がより深いハプロタイプを見出した。本研究は予測精度を向上させる新たなSNPセットの開発につながる可能性がある。
進行性前立腺癌200例の症例登録を目指す。さらに解析SNP数を増やし、HumanCoreExome BeadChip (Ilumina社)による240,000SNPマーカーのジェノタイピングを行う。本研究の総研究期間は5年(症例登録機関2年、観察期間3年)に設定し、観察期間の終了までに全症例の臨床データ集積とデータベースの構築を行い、臨床データベースとSNP解析の結果から、前研究で同定した進行性前立腺癌の予後に関わるSNPを外部コホートで前向きに検証する。また、同時に新たな予後予測マーカーを探索的に検討し、将来の研究開発に繋げていくことを想定している。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Genes Cancer
巻: 4 ページ: 54-60
10.1177/1947601913481354
BMC Cancer
巻: 13 ページ: 150
10.1186/1471-2407-13-150