研究概要 |
我々は、初めて長鎖脂肪酸パルミチン(PA)刺激で前立腺癌細胞 LNCaP, PC-3、DU145でのMIC-1の遺伝子発現の亢進を確認し、さらにPA刺激でPC-3, DU145細胞内と細胞培養液中のMIC-1の産生が亢進することを確認した。LNCaP xenograft解析では、高脂肪食(HFD)摂取群では低脂肪食群(LFD)より癌の大きさ ((2569.9 ± 151.1 vs 2010.3 ± 120.7 mm3, p = 0.025)、癌組織中の脂肪酸量(172.2 ± 43.9 vs 119.6 ± 17.8 nMol/mg, p < 0.001)、血清中のMIC-1濃度(24155.2 ± 4281.6 vs 18343.8 ± 7019.9 pg/mL, p = 0.012)は有意に高く、さらに血清MIC-1は癌の大きさと相関していた(r = 0.642, p = 0.022)。マウス血清を用いた細胞増殖アッセイでは、HFD群はコントロ―ル群より有意にLNCaP, C4-2細胞の増殖と浸潤を促進し、リコンビナントMIC-1(rMIC-1)も同様に前立腺癌細胞の増殖と浸潤を促進した。さらに、HFD血清、rMIC-1によってERKシグナルが活性化されることを確認している。健常者54人と前立腺癌患者168人の血清MIC-1を比較では、前立腺癌患者血清MIC-1は健常者に比べて有意に高く(1154.2 ± 889.9 vs 784.0 ± 299.6 pg/mL, p = 0.002)、前立腺癌患者血清MIC-1は、Gleason score (GS)が高くなるにつれて有意に高く(p < 0.01)、患者の肥満度と関連している可能性が示唆された(p = 0.087)。以上の結果より、MIC-1は高脂肪食や肥満による前立腺癌進展に関与している可能性が示唆された。
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