研究概要 |
24年度は骨転移を有する前立腺癌の臨床再発、癌特異的生存率を予測する分子診断モデルを構築した。 骨転移を有する前立腺癌に対して70年以上前からアンドロゲン除去療法が実施されている。治療への反応性、耐久性は個々により様々で効果持続期間が短く早期に臨床再燃し癌死に至ったり、効果持続期間が長く生命予後が長かったりする症例がある。治療開始前に診断に用いた前立腺生検標本にて臨床再燃、癌特異的生存率を予想できれば前立腺癌治療に新たな展開が期待される。 対象は46例の骨転移を有する前立腺癌。前立腺生検標本をレーザーマイクロダイセクションにて癌細胞、間質細胞を別々に採取しRNAを抽出した。アンドロゲンシグナル、エストロゲンシグナル、幹細胞マーカー、その他の前立腺癌と関連する遺伝子の発現をRT-PCR法にて測定し臨床病理学的背景因子との関連を調べた。 Sox2, Her2, CRP, AR, ERαと臨床パラメーターを組み合わせることで臨床再燃をする症例が予測できた (Area under the curve=1.0)。また10個 (Oct1, TRIM36, Sox2, c-Myc, AR, Klf4, ERα, PSA, Gleason score, extent of disease)の癌特異的生存率に関与する因子を同定した。これらのリスク因子を用いて患者を3群(良好群、中間群、不良群)に分類したところ、5年生存率はそれぞれ90%,32%, 12%であり有意差を認めた。 本研究は骨転移を有する前立腺癌において生検標本を用いた分子診断は臨床再燃および癌特異的生存率を強力に予測できる手段であることを見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は今回臨床再燃に有用であった遺伝子の組み合わせ(Sox2, Her2, CRP, AR, ERα)と判別分析に用いた計算式が他の骨転移を有するコホートでも有用であるかの妥当性の検討を行う。生命予後に関しても検討できればリスク分類による生命予後の差についても妥当性を検証する。
|