研究課題
本研究の目的はゲノムDNA上に存在する一塩基多型をマーカーとして前立腺癌のi)発症リスク、ii)臨床病理学的特徴、iii)生命予後の個体差について解明し、前立腺癌に対する最適な治療方法を個別に計画すること、特に治療を延期するPSA監視療法が適切な症例を特定するために一塩基多型情報を応用する可能性について検討することである。研究計画段階において保有していたDNA検体は日本人臨床前立腺癌症例518人、日本人前立腺ラテント癌症例102人、コントロール323人であったが、その後日本人臨床前立腺癌症例518人(+0)、日本人前立腺ラテント癌症例156人(+54)、コントロール447人(+123)に増加した。予後調査は2012年11月末までに完了しており、追加されたラテント前立腺癌症例の病理学的所見の検討も2013年3月現在完了している。2013年9月末までに55箇所の一塩基多型のgenotypingを完了し、2013年11月末までに統計解析を完了している。その結果、55箇所中6箇所の一塩基多型が日本人の孤発性前立腺癌発症リスク因子であり、その6箇所全てが第8染色体上に存在していることが確認された。また1箇所の一塩基多型(X染色体)はラテント前立腺癌の発生に有意に関連していることも明らかとなった。さらに、Overall survival(OS)に有意に関連したSNPは第4染色体上のrs12500426多型(C/A)のみであった。A allele carrierはC allele carrierに比べて予後不良であり、ハザード比(95% CI,P value)は1.558 (1.175-2.069,P = 0.0021)であった。多変量解析の結果、OSに寄与していた因子はrs12500426多型、年齢、Gleason score、遠隔転移の有無の4つであった。
2: おおむね順調に進展している
昨年度中に一塩基多型のgenotyping assayおよび統計解析を完了することができたため、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
今後は、学会(欧州泌尿器科学会@ストックホルム、日本泌尿器科学会@神戸)研究成果を報告し、そのディスカッションを踏まえて論文を作成し、学会誌等で公表する予定である。
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