研究課題
本研究の目的はゲノムDNA上に存在する一塩基多型をマーカーとして前立腺癌の1)発症リスク、2)臨床病理学的特徴、3)生命おごの個体差について解明し、前立腺癌に対する最適な治療方法を個別に計画すること、特に治療を延期するPSA監視療法が適切な症例を特定するために、一塩基多型情報を応用する可能性について検討することである。本研究では日本人臨床前立腺癌症例518人、日本人前立腺ラテント前立腺癌症例156人、非担癌男性剖検症例(コントロール検体として)447人のゲノムDNAを使用した。まず、前立腺癌症例の50%に認められると報告のあるTMPRSS2-ERG遺伝子融合に関連するTMPRSS2 Met160Val多型と前立腺癌発症リスク、生命予後との関連性について検討を行った。その結果、CC (Val/Val)遺伝子型に対してTT (Met/Met)遺伝子型を持つ個体では前立腺癌発症リスクが1.907倍(95%信頼区間:1.224-2.990)であることが判明した。一方、ラテント前立腺癌においては、本多型は前立腺癌発症のリスク因子ではないことが明らかとなり、臨床癌とラテント癌の遺伝的背景の相違が認められた。また、生命予後に本多型は影響していないことも明らかとなった。過去にGenome-wide association studyで報告のある前立腺癌発症に関連する55箇所の一塩基多型についても前立腺癌発症リスク等について検討を行った。その結果、6箇所の一塩基多型が日本人における臨床前立腺癌の発症に関わるリスク因子であること、さらにその全てが第8染色体上に存在していることも明らかとなった。そのうち、rs12500426 (A/C)多型は臨床前立腺癌患者のoverall survivalと有意に相関し、A allele carrierはC allele carrierに比べて予後不良であり、ハザード比は1.558倍(95%信頼区間:1.175-2.069)であった。多変量解析の結果、overall survivalに寄与する因子はre12500426多型、年齢、Gleason score、遠隔転移の有無の4因子であった。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
International Journal of Uroogy
巻: 21 ページ: 1234-1238
10.1111/iju.12578