研究課題
基盤研究(C)
本研究は、ナノテクノロジーの産物である磁性体ナノ粒子を前立腺癌治療への応用を見据えた研究である。既に酸化鉄のナノ粒子は、MRI造影剤として医療等へ応用されている。利用する磁性体ナノ粒子は、分散能が高いマグネタイト(Fe3O4)ナノ粒子(MgNPs)であり、強い磁性力とヒドロキシルラジカルの生成が特徴である。そのため、温熱療法や化学療法への応用が考えられる。本研究の目的は、(1)MgNPsの前立腺癌細胞化学療法に対する効果とその機構の解明、(2)MgNPsの表面修飾による効果とその機構の解明、(3)MgNPs関連遺伝子産物の役割および腫瘍マーカーへの応用、(4)3次元培養(スフェロイド培養)での解析である。本年度は、(1)および(2)についての解析を行った。同粒子と前立腺癌に対する化学療法でfirst lineで使用される抗癌剤ドセタキセル(Docetaxel)との併用により、ドセタキセルを減量させ、同程度の抗癌作用を示す事が確認された。これは、同ナノ粒子が前立腺癌細胞株DU-145において、活性酸素種(ROS)を産生させ、またNF-kappa Bの発現を減少させる事より、同効果を示したと考えられた。また、同ナノ粒子にカルボキシル基による表面修飾を行い、同様にドセタキセルと併用し、抗癌作用を評価した。表面修飾ナノ粒子では、同様にドセタキセル使用量を減量させ、同程度以上の抗癌作用を確認した。この表面修飾ナノ粒子は、DU-145細胞内でROSの顕著な産生を認めず、表面修飾ナノ粒子の作用機序は非修飾ナノ粒子と異なる事が推測された。
2: おおむね順調に進展している
非修飾および修飾マグネタイトナノ粒子と抗癌剤の併用により、抗癌剤の減量及び同程度以上の抗癌作用を確認出来た事は重要である。また、その異なる作用機序を示す事が出来た。一方、その作用機序、特に細胞内シグナリングを対象と解析は若干の遅れを認める。
前立腺癌細胞株における抗癌剤ドセタキセルおよびマグネタイトナノ粒子併用時の抗癌剤効果上昇の機構の解明として、併用処理時の前立腺がん細胞株(DU145, LNCaP)におけるROS産生とApoptosis経路の解析、併用処理時の前立腺がん細胞株における薬剤排出ポンプの発現解析、併用処理時の前立腺がん細胞株におけるシグナル伝達の解析を行う。また、前立腺癌細胞株における抗癌剤ドセタキセルおよびカルボキシル基修飾マグネタイトナノ粒子併用時の抗がん剤効果上昇の機構の解明として、カルボキシル基修飾マグネタイトナノ粒子の細胞毒性評価、カルボキシル基修飾マグネタイトナノ粒子の細胞内局在の解析、抗がん剤効果上昇の機構の解明を行う。
該当なし
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Int J Nanomed
巻: 8 ページ: 印刷中
化学工業
巻: 64 ページ: 67-73
Nanotoxicology
巻: 7 ページ: 452-461