研究課題
本研究は、ナノテクノロジーの産物である磁性体ナノ粒子を前立腺癌治療への複合的な治療展開を見据えた研究である。既に酸化鉄のナノ粒子は、MRI造影剤として医療等へ応用されている。利用する磁性体ナノ粒子は、分散能が高いマグネタイト(Fe3O4)ナノ粒子(MgNPs)であり、強い磁性力とヒドロキシルラジカルの生成が特徴であることより、温熱療法や化学療法への応用が考えられる。本年度は、(1)カルボキシル基修飾MgNPsの細胞毒性の評価、(2)カルボキシル基修飾MgNPsの細胞内局在の解析、(3)抗癌剤効果上昇の機構の解明であり、それぞれのための実験を行った。非修飾MgNPsの毒性評価では、濃度依存的に活性酸素種の発生、8-OHdG生成、PC-3およびLNCaP細胞において細胞生存率の低下を認めたが、カルボキシル基修飾MgNPsでは、高濃度を除いて活性酸素種の発生や8-OHdG生成が抑制された。しかしながら、LDHの上昇はカルボキシル基修飾MgNPsで認められた。抗癌剤ドセタキセル(Docetaxel)との併用による効果は、非修飾に比べ、増強される事を認めた。カルボキシル基修飾MgNPsの作用機序は非修飾MgNPsと異なる事が推測された。フローサイトメトリーの解析より、カルボキシル基修飾MgNPsは非修飾MgNPsと同様に取り込まれると考えられた。非修飾MgNPsが抗癌剤との併用で、その効果を上げる機構は、活性酸素種の産生を介したapoptosisシグナル経路の活性化および生存シグナル経路の抑制という複数の経路が関わる事を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
非修飾MgNPsと同様に、カルボキシル基修飾MgNPsと抗癌剤の併用により、抗癌剤の減量及び同程度以上の抗癌作用を確認出来た。また、活性酸素種の生成の面からは、これら粒子の作用の仕方が異なる事を明らかにした。また、非修飾MgNPsが抗癌剤の効果を増強させるシグナル等を明らかにした。
前立腺癌細胞株における抗癌剤ドセタキセルおよびカルボキシル基修飾MgNPs併用時の抗癌剤効果上昇の機構の解明として、併用処理時の前立腺がん細胞株(DU145, LNCaP)の細胞周期、細胞膜損傷、生存およびApoptosis経路、薬剤排出ポンプの発現等の解析を行う。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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