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2013 年度 実施状況報告書

オートファジーの制御は前立腺癌治療のブレイクスルーとなりえるか

研究課題

研究課題/領域番号 24592383
研究機関福井大学

研究代表者

伊藤 秀明  福井大学, 医学部, 助教 (00345620)

研究分担者 多賀 峰克  福井大学, 医学部附属病院, 医員 (00529349)
横山 修  福井大学, 医学部, 教授 (90242552)
土山 克樹  福井大学, 医学部附属病院, 助教 (90464073)
キーワード腫瘍学
研究概要

アンドロゲン感受性前立腺癌細胞株LNCaPおよび非感受性前立腺癌細胞株PC3をアンドロゲン除去培養液にて培養を行うとLNCaPのみに増殖抑制効果が認められ、またLNCaPにのみオートファジーが誘導されていることが確認された。研究計画ではアンドロゲン除去により誘導されたオートファジーを、オートファジー抑制剤を用いて抑制することでの治療効果改善を検討する予定であったが、十分な効果が認められなかった。
そこで、オートファジーの誘導に深くかかわる蛋白であるmTORに対する抑制剤であるテムシロリムスを投与し、オートファジーの誘導と細胞増殖抑制効果を検討することとした。テムシロリムスの投与によりいずれの細胞株に対しても用量依存的に増殖抑制効果を示した。また、テムシロリムスによりオートファジーが誘導され、アポトーシスは高濃度においても誘導されないことを確認した。続いて臨床の場でアンドロゲン非感受性前立腺癌に対して使用されるドセタキセルを用いて同様の検討を行った。増殖抑制効果はいずれの細胞株においても用量依存的に認められた。さらに、低用量ではオートファジーが、高用量ではアポトーシスが誘導されることが示された。
この2剤を併用することで培養細胞、マウス皮下腫瘍モデルいずれにおいても増殖抑制効果が単剤の場合と比較して増強されていた。ドセタキセル単剤ではアポトーシスが誘導されなかった低用量を用いた場合でもテムシロリムスと併用することでアポトーシスが誘導された。ドセタキセルを減量することで副作用の軽減に貢献できる可能性が示唆された。
概要は日本泌尿器科学会総会、日本癌学会総会にて報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「オートファジーの制御は前立腺癌治療のブレイクスルーとなりえるか」というテーマに対して、当初アンドロゲン除去により培養細胞に誘導されるオートファジーの制御を計画した。残念ながら、これまでに報告されている他の治療により誘導されるオートファジーを抑制することによりアポトーシスが誘導され、増殖抑制効果が増強したとする報告と異なり、アンドロゲン除去培養と同時にオートファジー抑制を行っても細胞増殖抑制効果の増強はわずかで、アポトーシスの誘導は認められなかった。
新たにオートファジー誘導に深くかかわるmTORを抑制することでオートファジーを誘導するモデルを作成した。このmTOR抑制剤は現在、他の癌腫においては臨床応用されているものである。さらに実臨床で前立腺癌に対して使用されている抗癌剤ドセタキセルは低用量でオートファジーを、高用量ではアポトーシスを誘導することが示され、新しい知見と思われる。
さらに、低用量テムシロリムスと単剤ではアポトーシスを誘導できなかった低用量のドセタキセルの併用により、培養細胞にアポトーシスが誘導されることが示された。実臨床におけるドセタキセルの副作用軽減に貢献できる可能性が示唆され、達成度はおおむね順調であると考える。

今後の研究の推進方策

テムシロリムス、ドセタキセルの併用により増殖抑制効果が増強することが示され、さらに併用によりオートファジー誘導を克服してアポトーシスが誘導される可能性を示すことができた。今後は併用2剤の併用により、いかにオートファジー、アポトーシスの誘導が制御されるのかにつき、シグナル伝達の観点から解明したい。オートファジー、アポトーシス関連の各蛋白発現の変化につきウェスタンブロッティング法を用いて検証予定である。

次年度の研究費の使用計画

現在のところ実験はこれまでの実験結果の再検証を行っている段階である。
実験開始当初に購入したものなど古くなった試薬の再購入を要するものが多く、また、論文投稿の際に査読者から要求される追加実験の試薬購入目的に繰越金を確保した。
各種薬剤や抗体などの購入にあてる。この他、各学会での報告に際する出張費、投稿費用に充てる。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] パクリタキセル・カルボプラチン抵抗性前立腺癌に対してドセタキセル・プレドニンが著効した1例2013

    • 著者名/発表者名
      楠川直也、石田泰一、棚瀬和弥、伊藤秀明、青木芳隆、大山伸幸、秋野裕信、横山 修
    • 雑誌名

      泌尿器科紀要

      巻: 59 ページ: 301-304

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 血液透析中の去勢抵抗性前立腺癌に対しdocetaxel/prednisolone併用療法が奏効した1例2013

    • 著者名/発表者名
      伊藤秀明、稲村 聡、多賀峰克、土山克樹、楠川直也、大山伸幸、秋野裕信、横山 修
    • 雑誌名

      癌と化学療法

      巻: 40 ページ: 1245-1247

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 鏡視下腎摘除術の臨床的検討;一地方大学病院における施設としてのラーニングカーブ2013

    • 著者名/発表者名
      伊藤秀明、稲村 聡、関 雅也、多賀峰克、三輪吉司、横山 修
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Endourology

      巻: 26 ページ: 246-251

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Surgical Treatment of Adrenal Gland Metastasis Originating from Small Cell Carcinoma of the Urinary Bladder.2013

    • 著者名/発表者名
      Minekatsu Taga, Hideaki Ito, Naoya Kusukawa, Yoshiji Miwa, Hironobu Akino, Yoshiaki Imamura, and Osamu Yokoyama
    • 雑誌名

      Case Reports in Urology

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1155/2013/982787

    • 査読あり
  • [学会発表] 前立腺癌細胞株におけるmTOR阻害薬処理下でのautophagyに関する検討2013

    • 著者名/発表者名
      稲村聡、伊藤秀明、多賀峰克、土山克樹、伊藤浩史、横山修
    • 学会等名
      第72回日本癌学会総会
    • 発表場所
      横浜市(パシフィコ横浜)
    • 年月日
      20131003-20131003
  • [学会発表] 前立腺癌細胞株におけるmTOR阻害薬処理下でのautophagyに関する検討2013

    • 著者名/発表者名
      稲村聡、伊藤秀明、多賀峰克、土山克樹、伊藤浩史、横山修
    • 学会等名
      第101回日本泌尿器科学会総会
    • 発表場所
      札幌市(さっぽろ芸術文化の館)
    • 年月日
      20130425-20130425
  • [学会発表] mTOR阻害薬で誘導されるオートファジーの阻害が腎細胞癌増殖に及ぼす影響2013

    • 著者名/発表者名
      多賀峰克、伊藤秀明、稲村聡、土山克樹、長沼誠二、伊藤浩史、横山修
    • 学会等名
      第101回日本泌尿器科学会総会
    • 発表場所
      札幌市(さっぽろ芸術文化の館)
    • 年月日
      20130425-20130425
  • [学会発表] 当科における前立腺癌リスク分類別の根治的前立腺摘除術の治療成績2013

    • 著者名/発表者名
      伊藤秀明、稲村 聡、多賀峰克、土山克樹、大山伸幸、秋野裕信、今村好章、横山 修
    • 学会等名
      第101回日本泌尿器科学会総会
    • 発表場所
      札幌市(さっぽろ芸術文化の館)
    • 年月日
      20130425-20130425
  • [備考] 福井大学医学部研究活動一覧

    • URL

      http://www.med.u-fukui.ac.jp/home/ufms/file/kenkyu/welcome.html

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公開日: 2015-05-28  

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