研究課題/領域番号 |
24592388
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野々村 祝夫 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30263263)
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研究分担者 |
中井 康友 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20432479)
高山 仁志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50403051)
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キーワード | 前立腺癌 / 炎症 / 幹細胞 / 再生 |
研究概要 |
昨年度までで、我々が確立したラットの前立腺炎モデルにおいて、前立腺組織破壊からの再生過程で、 Sca-1, CD117, CD133など幹細胞マーカーを発現する細胞分画が増加していることが明らかになった。 平成25年度においては、これらの幹細胞の性質を有する細胞がどこから来るのかを調べるため、GFPラットの骨髄移植モデルを用いた。すなわち、ラットに全身放射照射を行い、GFPラットの骨髄を移植し、骨髄のみGFP発現のキメララットを作成した。このラットにリポポリサッカライド(LPS)を経尿道的に投与し前立腺炎を起こし、2週、8週、12週、32週目に前立腺を採取し、抗pancytokeratin抗体(luminal cell)、抗CK14抗体(basal cell)、抗GFP抗体(骨髄)を用いて蛍光免疫染色を行った。また、2週目に採取した前立腺をコラゲナーゼにて分解し、FACS ariaでCD45陰性かつGFP陽性の細胞分画をsortingした。この細胞のサイトケラチンの発現を免疫染色とqPCRで評価した。 その結果、LPS投与後2週目で最も前立腺腺管は破壊されており、luminal cellへの骨髄細胞の浸潤が認められた。また、その一部にGFPとpancytokeratin共陽性細胞を認めたが、CK14とGFPの共陽性は認められなかった。8週、12週、32週目でも炎症は残存し、一部の腺管においてはGFPとpancytokeratinの共陽性細胞が認められた。さらに、sortingした細胞は蛍光免疫染色でGFPとpancytokeratinの共陽性を認め、qPCRにてluminal cellのマーカーであるCK8のmRNAレベルが上昇していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
炎症後の再生において、骨髄由来の幹細胞分画が重要な役割を果たしているという知見を得ることは出来たが、ラットのPhIPを用いた発癌過程は40週以上かかるため、研究はやや遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
前立腺における炎症から発癌の過程を観察することが非常に重要な研究課題であると考えているが、PhIPによる発癌はラットでしか行えない。当初の予定には無かったが、遺伝子改変マウスを用い炎症モデルの確立を進めており、まもなく出来る予定である。これを用いることによって、もっと効率的に炎症後の再生過程のおける発癌メカニズムを調べることが出来ると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒトの前立腺癌手術検体から得られた癌病巣とPIN病巣におけるCGH arrayによる、遺伝子のコピー数変化の網羅的解析を予定していたが、実際のホルマリン包埋検体から抽出したDNAはかなり変性が激しく、CGH arrayにあまり適していなかったため、CGH array実験が充分に行えなかった。 当初の予定にはなかった、骨髄移植ラットを用いた炎症の再生過程の実験により、新しい知見が得られたため、研究計画をややそちらにシフトし、前立腺援護の再生過程における骨髄細胞の役割を解析する研究に使用したい。また、ラットよりマウスの方が圧倒的に研究がしやすいため、PhIPを用いた発癌系を遺伝子改変マウスを用いた発癌系に変えたいと考えている。26年度の動物実験に関する予算は元々充分であるとはいえなかったので、可能であればこれらの実験動物の費用に充てたい。
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