研究課題
「前立腺炎症後の再生における骨髄由来細胞浸潤」GFPキメララットの経尿道的LPS投与による前立腺炎症モデルにおいて、その再生過程で前立腺に浸潤する細胞をFACSにて解析したところ、腺管内に骨髄由来の細胞が浸潤していることが明らかとなった。免疫組織染色や定量的PCRより、前立腺再生腺管内に浸潤する骨髄由来細胞が上皮系のマーカーであるcytokeratin 8(CK8)を発現していることが分かった。このことは炎症により破壊された前立腺においては、浸潤した骨髄由来細胞が上皮系幹細胞となって腺管再生に寄与している可能性を示唆する。「炎症と発癌」この系において前立腺の発癌誘導剤であるPhIPを投与すると、癌には至らないまでも、前癌病変として知られるprostatic intraepithelial neoplasia (PIN)を高頻度に形成することが分かった。これらのPIN病変においては細胞増殖が亢進しており、発癌の前段階に達しているものと判断された。しかし、長期にPhIPを投与しても発癌率には有意な差を見いだし得なかった。このPhIPによる発癌誘導の系では、前立腺発癌に1年以上の期間を要してしまうため、繰り返し実験を行うことが困難である。「遺伝子改変前立腺発癌モデルの導入」Cre/LoxPシステムを用いたPTEN遺伝子の前立腺特異的ノックアウトマウスを作成し、その発癌過程を観察した。6週でほぼすべてのマウスの前立腺様病変が生じ、12週で癌を形成することが観察された。この前立腺を摘出し、浸潤する細胞を骨髄由来細胞をその表面マーカーによってsortingし、さらに種々のマーカーで分画を調べた。その結果、全細胞中の骨髄由来細胞(CD45+)の増加、CD45+細胞中のMDSC細胞(骨髄由来幹細胞)の比率の増加、CD45+細胞中の樹状細胞の増加を認めた。発癌過程での骨髄由来細胞、免疫系細胞の浸潤が認められ、何らかの役割を果たしていることが示唆された。
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