研究課題/領域番号 |
24592392
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
亭島 淳 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 講師 (20397962)
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研究分担者 |
松原 昭郎 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 教授 (10239064)
井上 省吾 広島大学, 病院, 助教 (90457177)
正路 晃一 広島大学, 病院, 医科診療医 (90565805)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | FGF19 |
研究概要 |
前立腺全摘除術により得られた前立腺癌組織についてFGF19、FGF21、FGFR2-4に対する抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、①FGF19サブファミリーおよび受容体の発現と再発、再燃の有無などの臨床経過や患者の基礎疾患の有無、病理組織学的所見との関連について検討した。FGF19は正常前立腺上皮、高分化癌組織に比較して分化度の低い癌組織で発現の上昇がみられ、肥満度の高い症例では発現上昇が著明かつ高頻度であった。 前立腺癌細胞株LNCaP、DU145、PC3について、FGF19、21ならびにFGF9を添加した状態での細胞増殖、細胞浸潤能への影響さらにFGFR2-4を安定発現することによる細胞増殖能、MTT assayならびにmatrigel invasion assayで解析、さらにこれらFGFファミリーの刺激やFGFR2-4導入により誘導される分子群についてウェスタンブロット法により解析した。FGF19、21刺激ではFGF9で刺激した場合と同様に、細胞増殖能、細胞浸潤能の促進がみられた。FGF9刺激によりVEGF、MMP2の発現誘導が認められたのに対し、FGF19、21刺激ではこれらの分子群の発現誘導は明らかではなく、FGF19サブファミリーでは他のFGFファミリーとは異なる分子機構阿存在する可能性が示唆された。これまでの研究成果は第71回日本癌学会総会、第100回日本泌尿器科学会総会、107th Annual Meeting of the American Urological Associationにおいて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肥満、メタボリック症候群と関連するFGF19の発現が、ヒト前立腺がん組織において確認され、臨床像や肥満の有無との関連が示唆される所見が得られた。さらにFGF19の前立腺癌細胞株の浸潤増殖能への効果を明らかにすることができた。また、FGF19サブファミリーが従来のFGFファミリーとは異なる分子機構を有することを示唆するデータも得られており、その下流分子の探索のためにさらなる研究が必要である。一方で、FGFRファミリーの中には免疫組織染色での検討がまだ不十分な分子もあり、異なる抗体を用いた検討なども要すると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、肥満、メタボリック症候群と関連するFGF19、FGF21が前立腺癌の増殖や進展に関与している可能性を示唆するデータを得ていること、FGF19、FGF21がホルモン様作用を有し、局所のみならず血液を介して全身に広範囲に作用しうることが報告されていることなどを考慮し、広島大学病院泌尿器科で前立腺針生検施行前に採取し凍結保存している患者血液検体において、FGF19、FGF21の血清濃度をELISA法を用いて測定し、生検結果、患者の基礎疾患の有無、臨床経過との関連について検討する。血液検体は倫理委員会の承認を得た本研究計画の内容に基づいて患者に説明、同意を得た上で採取・保存している。さらに前立腺癌細胞株に対するFGF19、FGF21刺激による細胞周期制御やアポトーシス、IGFをはじめとするリン酸化シグナル、アンドロゲンレセプターシグナルへの効果についてウェスタンブロット法、フローサイトメトリー、ルシフェラーゼアッセイによりそれぞれ解析する。ヒト前立腺癌組織および前立腺癌細胞株におけるα/β-Klothoの発現解析を免疫組織染色ならびにリアルタイムPCR法によりそれぞれ行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に交付予定の直接経費150万円は、細胞生物学的実験、免疫組織染色、リアルタイムPCR法における消耗品費に加え、FGF19、FGF21を測定するためのERISAキットの購入にあてる。本研究費で対応可能である。
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