研究概要 |
膀胱癌に対する,経尿道的腫瘍切除術(TURBT)を含めた集学的治療の予後を,治療前に予測し患者選択することは意義深い.ERCC1はcisplatinによるDNA損傷が,またXRCC1, APE1は放射線によるDNA損傷がそれぞれ修復される際にキーとなるタンパクである.Cisplatin基礎の抗癌化学放射線療法にTURBTを併用した集学的治療施行膀胱癌において,ERCC1, XRCC1, APE1発現と治療効果・予後との関連について解析し,これら発現が同療法の予後予測に有用か検討した.対象は集学的治療が施行された膀胱尿路上皮癌患者157例で,治療前腫瘍組織におけるERCC1, XRCC1, APE1発現を免疫組織化学染色法にて検査した.3つのタンパク発現と化学放射線療法直接抗癌効果との間に有意な関連は認められなかった.しかし,ERCC1陽性(P=0.023), XRCC1陽性(P =0.025)もしくは,両者の少なくとも一方が陽性(combined analysis; P=0.009)の患者には有意に良好な癌特異的生存率が認められた.多変量解析において,ERCC1および,XRCC1発現(combined analysis)には独立して生存率との間に有意な関連が認められた(リスク比0.64; 95%信頼区間0.43-0.94; P=0.024).ERCC1および,XRCC1発現は,集学的治療施行膀胱癌患者における独立した予後予測因子として有用である可能性が示唆された.
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