乳頭状細胞接着分子 papillary cell adhesion molecule(pCAM;仮名)は、主に神経や内分泌組織に分布し、細胞-細胞間接着や細胞-細胞外基質間接着を担う因子として報告されている。 本研究の目的は、pCAMが、乳頭状腎癌における分子病理学的な腫瘍構築因子であること、腫瘍の分化や悪性度を決定するキーファクターであることを証明することである。 pCAMを高発現する未分化な腎淡明細胞癌786-O細胞のpCAM発現抑制を行い、786-O-pCAM-KO細胞を樹立した。本細胞を胸腺無形性ヌードマウスの腎臓に同所移植したところ、高分化な乳頭状腎癌に形態変化をした。また、pCAMを再発現させた786-O-pCAM-mut細胞は、再び未分化な腎淡明細胞癌に回帰した。pCAM発現の抑制により、3次元培養での細胞形態が変化し、細胞増殖速度が低下した。pCAM発現にともなう上皮間葉転換(EMT)への影響を解析するために、3次元培養からのmRNAを用いてEMT関連因子のPCR arrayを行った。淡明細胞癌から乳頭状腎癌への変化にともなって、間葉系因子の高発現が多く認められた。一方、間葉系マーカーであるビメンチンの免疫染色では、淡明細胞癌から乳頭状腎癌への変化にともなって、その発現は低下していた。 以上の結果より、pCAMは腎癌において明らかに腫瘍構築と分化を変化させるキーファクターであることがわかった。これらの変化はEMT関連因子の発現変化を伴っていたが、その方向性は一定ではなかった。
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