研究課題/領域番号 |
24592397
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
野村 威雄 大分大学, 医学部, 講師 (40347034)
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研究分担者 |
三股 浩光 大分大学, 医学部, 教授 (60219714)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 低酸素 / EMT |
研究概要 |
6ヶ月間以上低酸素環境下で継代培養した長期低酸素培養前立腺癌細胞(LNCaP/CH)の高遊走-浸潤能はEMTに由来する可能性があるため、まずEMT関連分子のうちE-cadherin、N-cadherin、Vimentin遺伝子をreal-time PCR法さらに蛋白発現量を免疫ブロット法にて解析し定量した。LNCaP/CH細胞において遺伝子および蛋白レベルでのE-cadherin発現低下、N-cadherin、Vimentin発現亢進を認めた。次にEMT関連分子の転写因子として知られるSnailの発現を遺伝子および蛋白レベルで解析した。Snail発現はLNCaP細胞およびLNCaP/CH細胞とも同程度であったが、細胞質分画と核分画における発現量を定量する必要がある。Snailは転写因子として作用するシャトル蛋白であり、細胞内局在を免疫染色法で評価した。LNCaP/CH細胞においてSnailの核移行が著明であり、EMTに関与する可能性が示唆された。胚細胞においてSnail活性化にStat3-LIV1シグナル伝達系の関与が報告されており、LNCaP/CH細胞におけるStat3活性化状態についてリン酸化Stat3抗体を用いた免疫ブロット法で解析した。LNCaP/CH細胞においてStat3リン酸化の亢進を認め、前立腺癌細胞においてもStat3-LIV1-Snailシグナル伝達系活性化がEMTに関与する可能性が示唆された。LIV1遺伝子発現もLNCaP/CH細胞において亢進しており、Stat3-LIV1-Snailシグナル伝達系活性化を支持する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究予定においてはLNCaP細胞とLNCaP/CH細胞におけるEMTの分子生物学的解析を計画していた。LNCaP/CH細胞で観察される浸潤・遊走能の亢進は形態的には特記すべき変化を認めなかったが、分子学的にはEMT関連分子の発現および転写因子であるSnailの細胞内局在の変化に由来している可能性が示唆された。当初の計画では、①LNCaP/CH細胞でのStat3-LIV1-Snail系活性化をJAK阻害剤(AG490)および dominant negative Stat3(dnStat3)強制発現系を用いて解析し、この経路がEMTを制御することを証明し、さらに②当研究室から論文報告したLNCaP/CH細胞で高発現するVav3遺伝子がStat3-LIV1-Snailシグナル伝達系の上流でシグナル伝達を制御していることを解析する予定であった。これらの研究については平成24年度は条件設定等の基礎研究まで進展していないため、達成度としては上記と考える。
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今後の研究の推進方策 |
LNCaP/CH細胞でのStat3-LIV1-Snail系活性化をJAK阻害剤および dominant negative Stat3強制発現系を用いて解析し、この経路がEMTを制御するか証明する。次にVav3がStat3-LIV1-Snailシグナル伝達系の上流で機能することを確認するために、Vav3遺伝子をsiRNA処理しVav3-Stat3-LIV1-Snail系の活性化状態をそれぞれの遺伝子および蛋白発現量を解析する。またStat3はPI3K/AktおよびMAPKシグナルを活性化し、さらにはAR活性化を促進する可能性があり、PI3K/AktおよびMAPKシグナル活性化についてリン酸化抗体を用いて検討する in vitroにおいて高増殖・高遊走-浸潤能を有することが証明されたLNCaP/CH細胞の転移能および致死性をin vivoにて検討する。LNCaP -Luc細胞およびLNCaP/CH -Luc細胞をヌードマウスに注入し、全身転移巣の出現および生存率を検討する。転移巣の検出はCCDカメラによるreal-time bioluminescene imageとして経時的に解析定量する。また切除した転移組織を用いてEMT関連分子(E-cadherin、N-cadherin、Vimentin)およびSnailを免疫染色し、その発現様式を投与した培養細胞と比較する。 次にLNCaP/CH細胞のドセタキセル感受性およびアポトーシス誘導効果が、Vav3 siRNA処理した際に増強されるか分子細胞学的に解析する。LNCaP/CH細胞にVav3 siRNAを遺伝子導入およびドセタキセル投与し、併用効果についてWST-1法による細胞増殖速度およびFacsによるsub G1細胞数によるアポトーシス細胞定量化を行う。さらにcaspase-3,8,9、PARPについて免疫ブロット法にて解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養に使用する消耗品(培養液等)、EMT関連分子の解析に使用するPCRキット、抗体等の購入が必要である。さらにヌードマウス20匹の購入を予定している。
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