研究課題/領域番号 |
24592397
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
野村 威雄 大分大学, 医学部, 客員研究員 (40347034)
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研究分担者 |
三股 浩光 大分大学, 医学部, 教授 (60219714)
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キーワード | 低酸素 / EMT |
研究概要 |
高増殖・高遊走-浸潤能を有するLNCaP/CH細胞の転移能および致死性をin vivoにて検討した。Luciferase cDNAを遺伝子導入したLNCaP -Luc細胞あるいはLNCaP/CH -Luc細胞をヌードマウスにそれぞれ50万個心臓内注入し、経時的に全身転移巣の出現および生存率を検討した。全身転移巣の検出はCCDカメラで経時的に解析定量し、また骨転移巣はX線にて評価し、死亡した時点で解剖し多臓器転移巣を検索した。さらに切除した転移組織におけるEMT関連分子(E-cadherin、N-cadherin、Vimentin)およびSnailを免疫染色し、その発現様式を投与した培養細胞と比較した。LNCaP/CH -Luc細胞群ではコントール群と比較して骨転移巣出現率が高く、また有意な生存率の低下を認めた。X線解析では骨転移巣は両群とも造骨性変化が強く、Vav3高発現による影響は認めなかった。剖検結果は、LNCaP/CH -Luc細胞群においてコントロール群と比較して多臓器転移(肝臓、肺、皮下)を有意に多く認めた。骨転移巣における免疫染色の結果はLNCaP/CH -Luc細胞群においてE-cadherin発現低下、N-cadherin発現亢進、Vimentin発現亢進およびSnail発現亢進を認め、その発現様式は培養細胞に類似していた。しかしコントロール群においても同様の傾向があり、さらなる検討が必要である。 次にLNCaP/CH細胞のドセタキセル感受性およびアポトーシス誘導効果が、Vav3 siRNA処理した際に増強されるか解析した。LNCaP/CH細胞にVav3 siRNAを遺伝子導入した24時間後にドセタキセル投与開始し、併用効果についてドセタキセル濃度および経時的に細胞増殖速度、さらにはFacsによるアポトーシス細胞定量化を行った。さらにCaspase活性に加え、Caspase-3,8,9、PARPについて免疫ブロット法にて解析した。 LNCaP/CH細胞ではVav3 siRNAによるVav3ノックダウンによりドセタキセル感受性亢進を認め、さらにはアポトーシス誘導効果(sub G1数、TUNEL染色およびCaspase活性、Caspase3,9分断化、PARP分断化)の増強を認めた。一方、Caspase-8の変化は認めなかった
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度研究予定ではLNCaP/CH細胞の悪性化をin vivoで証明することを主に計画していた。LNCaP/CH細胞群での高転移率(特に骨)および生存率の低下は遊走・浸潤能亢進を認めるVav3高発現細胞の特性が生体内でも反映される結果であった。また摘出病変の分子学的解析からは転移巣でのMET変化はないことから、転移巣での細胞定着よりもさらなる浸潤傾向が示唆された。さらに治療法確立のためにドセタキセルとVav3 siRNAの併用処理によるアポトーシス誘導効果の増強について解析した。この分子学的機序の解析まで十分に研究は進んでいないため、達成度としては上記と考える。
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今後の研究の推進方策 |
LNCaP/CH細胞に対するVav3ノックダウンによるドセタキセル作用増強効果を動物モデルにおいて解析する。LNCaP/CH-Luc細胞をヌードマウスに皮下移植し、移植後14日後からドセタキセル10mg/kg、1回/週、経腹腔投与およびVav3 siRNA-アテロコラーゲン複合体1回/週、腫瘍内投与(ドセタキセル+siRNA治療群)し、腫瘍径およびluciferase発光強度の変化をin vivoイメージングシステム(IVIS Imaging System, Xenogen社)で計量し、ドセタキセル単独投与群、Vav3 siRNA単独治療群と比較する。同時に体重変化も測定し、有害事象の発生を監視する。siRNA-アテロコラーゲン複合体腫瘍内投与による遺伝子導入効率はsiRNA単独局注より高率で作用持続時間が長いと報告されているが、in vitro系と比較して低率である可能性があり、遺伝子導入効率が低い場合はVav3発現をshRNAにより恒常的に抑制したLNCaP/CH(sh-Vav3)-Luc細胞をヌードマウスに皮下移植し、移植後14日後からドセタキセル10mg/kg、1回/週、経腹腔投与し、腫瘍径およびluciferase発光強度の変化をLNCaP/CH(sh-Vav3)-Luc細胞、LNCaP/CH(sh-control)-Luc細胞:ドセタキセル治療群と比較する。移植後60日目に腫瘍を採取し、TUNEL法に加えKi67、Bcl-2、pARによる免疫染色を施行し、腫瘍増殖およびアポトーシスを定量する。さらにはEMT関連分子による免疫染色により上皮間葉系変化についても評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究が概ね順調に進んだため当初予定していた抗体等の物品が少なくて済んだため。 細胞培養に使用する消耗品(培養液等)を購入予定
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