研究課題
DNAマイクロアレイの網羅的発現情報をもとに、腎癌病理組織型別また予後別の遺伝子発現変動の状態を調べた。その結果、サイトカイン時代だけではなく最近の分子標的治療が行われた症例でも腎癌の有意な予後因子として広く認知されている高Ca血症およびその原因となるPTHLH遺伝子に着目して引き続き解析を行った。本年度は進行転移症例を中心に検体とこれらの臨床病理の詳細なデータについても集積し、より細かな解析を進めた。PTHLH遺伝子の定量的発現値の検出はこれまでと同様に、腎癌組織検体よりtotal RNAを抽出、cDNAを合成、プール化した後、リアルタイムPCR法により、ACTBを内在性コントロールとして測定した。その結果、腎摘除術が行なわれた stage IVの進行性淡明細胞腎癌(n=113)の単変量予後解析では、LDH、Hgb、補正Ca値、KPS、好中球数、血小板数、腫瘍gradeとともに、PTHLH発現値が全生存(overall survival(OS))の有意な予後因子であることをみいだした。一方、転移臓器数(<1, 2<=)の因子についてはOS予後との有意な関連はみられなかった。さらにCox多変量解析では、PTHLH発現値、腫瘍gradeとともに、1)NCCNのrisk因子を含むモデル、2)HengらのDatabase Consortium modelの因子を含むモデル、さらに、3)これら全ての因子を含むモデル、について検討したが、いずれのモデルにおいても、PTHLH発現は独立した予後因子となっていた。さらに腫瘍gradeも同様に3つのモデルで予後因子となっていたが、一方補正Ca値はいずれのモデルでも予後との有意な関連は検出できなかった。以上より腫瘍PTHLH発現検出は、淡明細胞腎癌の進行転移症例においても有用な分子マーカー、予後因子になり得ると考えられた。
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