研究課題/領域番号 |
24592406
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
玉田 聡 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20382179)
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研究分担者 |
魏 民 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70336783)
加藤 実 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 登録医 (30711684)
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キーワード | 膀胱がん / 浸潤 |
研究概要 |
我々は、膀胱癌の進展過程において、androgen及びその前駆体あるいは代謝産物、またandrogen receptor signalingが膀胱癌の発生あるいは進展に関与しているとの仮説の下、研究を遂行している。今回我々は副腎由来のアンドロゲン生合成において重要な酵素であるsteroid sulfatase(STS)が膀胱癌の進展に重要な役割を果たしていると考え、本研究でSTSの発現および機能解析を行っている。 当該年度ではアンドロゲンシグナル伝達経路の視点からSTSの機能解析をさらに進めた。まずアンドロゲンレセプター(AR)の発現を定量評価したところ、TCCSUPではmRNA、蛋白レベルいずれにおいてもARの発現が認められたことに対し、T24ではARは無~低発現であった。STS inhibitorである667 coumateがTCCSUPでは増殖抑制効果を認めたことに対してT24ではその効果が認められなかったことと併せると、STSの機能は少なくとも部分的にはARを介して作用している可能性が示唆された。さらに、667 coumate投与により遊走・浸潤における抑制効果は認められなかったが、STSノックダウンによりTCCSUP、T24ともに遊走能・浸潤能が有意に低下することが認められた。加えて、細胞増殖能には有意な変化が認められなかったことから、STSは細胞増殖よりもむしろ上皮間葉系移行(EMT)に関連していることが示唆された。 一方、経尿道的膀胱腫瘍切除術により得られた手術標本計102例に対しても免疫組織染色を行い、STS陽性例は有意に術後増悪する傾向が認められた。これはSTSが膀胱癌の比較的早期から腫瘍に高発現し、EMTに関与する可能性を支持する結果と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では当初予定していた通り、key factorの1つと考えられるアンドロゲンレセプター(AR)の発現量をそれぞれで確認し、STSの機能は少なくとも部分的にはARを介して作用している可能性を示唆する結果を得た。さらに早期膀胱癌症例の免疫組織染色の結果から、STS発現陽性例は有意に早期に増悪する傾向が認められ、加えてSTSノックダウンによりTCCSUP、T24ともに遊走能・浸潤能が有意に低下したことから、STSは上皮間葉系移行(EMT)に関連する可能性を示す結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度ではほぼ予定通りに研究課題を遂行することができたため、次年度ではSTS特異的siRNAおよびスクランブルsiRNAをトランスフェクションした細胞からmRNAを抽出し、real-time RT PCRにより、EMT関連遺伝子の変化を検討する。具体的には特に膀胱癌で注目されているE-cadherin、N-cadherin、Vimentin、ZEB1などの遺伝子に着目して有意な変化が認められるか検討する。加えて、cDNAマイクロアレイにより網羅的な遺伝子発現変化を評価する予定である。 これまでの結果から、化合物であるSTS inhibitorの667 coumateではsiRNAと同様の変化が認められなかったことが課題となる。原因として、十分な細胞内移行が得られなかったためか、至適濃度に至っていなかったのかなど、検討が必要である。In vitro, in vivoでは周囲環境に大きな隔たりがあるため、治療を目的とした人への外挿性を考慮し、667 coumateを用いたin vivo studyを次年度行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
in vivoモデルによる解析がまだ行えていないため。 次年度に実験動物およびSTS inhibitorの購入費に充当する予定である。
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