研究実績の概要 |
平成26年度において、浸潤性膀胱癌細胞株T24, TCCSUPにSTS特異的siRNAをトランスフェクションした後にmRNAを抽出し、遺伝子発現の変化を特に浸潤性マーカーE-Cadherin, N-Cadherin, vimentin, ZEB1などに注目して検討を行った。各遺伝子発現の増減変化に関しては両者で必ずしも一致しなかったものの、ともにSTSノックダウンによるMET様の変化が認められた。さらにTCCSUP細胞株ではSTSノックダウンしたRNAを用いてcDNA microarrayによる網羅的解析を加えたが、EMT特異的な変化としては捉えることができなかった。in vivo実験系では、nude mouseを用いたxenograft modelでSTS inhibitorである667 coumate(oral gavage, qd)の治療効果を検討したが、体重抑制などは認められないものの有意な腫瘍縮小効果は認められなかった。
以上の研究結果を総括すると、①STSはヒト浸潤性膀胱がんで高発現が認められ、予後不良因子であることが示唆された。②STS高発現の筋層非浸潤性膀胱癌は有意に増悪する傾向が認められた。③STSは、ノックダウンすることで遊走能および浸潤能が低下することからEMT関連遺伝子である可能性が示された。③STSをノックダウンすることでvimentinなどのEMT関連遺伝子の発現低下が認められ、膀胱がんの新規治療標的分子になりうることが示された。
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